ピンクが似合うかわいい女の子でいようと努力した
20歳を越して思う。そのままの自分をさらけ出せる人が、かっこいいんだって。
小さな頃からピンクが好きだった。
私と妹で、ピンクか水色、と色違いのものを渡されたら必ずピンクを選んできた。
だって、女の子らしくてかわいい。かわいいものはテンションが上がる。
小学校の頃、私はいつも女の子達にかわいいと言われてきた。
ピンクが似合うね、女の子らしいね、お姫様だね、そんなことを周りから言われてきた。
かわいいと、ちやほやされてきた。
私はそれがうれしくて、そんな自分が好きで、ピンクが似合うかわいい女の子でいようと努力した。
でも中学一年生の頃、私の入ったテニス部でいじめが流行った。当時のテニス部は大規模で、派手な女子が集まるイケイケな部活だった。
それでも私は自己肯定感が高く、当然かわいい私は好かれると思っていた。
ところが。
次第に私もいじめの対象になり、私のかわいいは「ぶりっ子」という悪口になった。
私はただ、好きなものを好きでいたいだけだったのに
ピンクが好き、なんて言えない環境。初めて自分が恥ずかしい、と思うようになった。
当時の女子達はモノトーンのオシャレ系か、ガチャピンやクレヨンしんちゃんのようなノリのよいネタ系が流行っていた。
ゴリラやウンコなどの言葉が飛び交い、可愛くてノリもよい面白い子が人気だった。
お昼は外でみんなあぐらをかいて座る。飲み物はラッパ飲み。
私には信じられなかった。そんな恥ずかしいことは出来ない。
私だけ横座り、大声も出せない。次第に浮いていき、いじめられるようになった。
「男ウケ狙っててキモイ」
「自分がカワイイと思ってるナルシ」
「ぶりっ子死ね」
私はただ好きなものを好きでいたいだけだった。でも、それが原因で虐められるなんて。
ピンクなんて、キモイ。
そう思うようになった。
今思えば別にピンクが悪かった訳ではなく、上手く周りと合わせられなかった自分の幼さが原因だった。でも、幼い私にはその事実が理解出来なくて。
どこかに責任転嫁をしたかった。
高校では明るい女子を演じた。ピンクの持ち物は持たなくなった。流行りのくすみカラーや、グレーを好んだ。流行りのお笑いやYouTubeを見てノリを合わせられるようにした。たとえ自分を偽ってでも、嫌われたくなかった。これでいい、そう思っていた。
ピンクが好きなんて、もう言わない。
周りに流されて、自分を偽って、でもどこかで周りを見下していた
大学でも同じように明るく過ごそうとした。
しかし、そこである友人に出会った。彼女は人気者で、明るくてノリが良くて優しかった。
仲良くするうちに、彼女はピンクの持ち物が多いなと思った。でも私は中学の経験から、気づかないフリをした。
その子と一緒に服を買いに行った時、「私、このピンクのがいい」と彼女はそういった。
「え?ピンク?」
ピンクなんて、と批判的な気持ちが湧いた。ある種の嫉妬だった。
「かわいくない?女子の特権だよね」
びっくりした。こんなにノリが良くて明るい子が、当たり前のようにピンクを選ぶなんて。
そのままの自分で生きている彼女が、かっこいいと思った。
色なんて問題じゃなかった。あの時にも、強く自分を持っていれば、彼女みたいに今でも明るく居られただろうか。
周りに流されて、自分を偽って、でもどこかで周りを見下して。今の自分が1番嫌いだと思った。
中学以来、私は人から見える部分にピンクは用いなくなったけど、部屋の中はピンクの小物ばっかりだった。やっぱりピンクはかわいい。テンションが上がる。今でもこの気持ちは変わっていなかった。
今の私は、自信を持ってピンクが好きだと言える。本来の自分をさらけ出すことはすごく難しいけど、もうあの頃とは違う。
周りも大人になって、虐められることもなくなった。一度さらけ出してしまえば自信もついてくる。今の彼氏も、○○と言えばピンクだね、といつもピンクのものを選んでくれるようになった。本当の自分を好きでいてくれる人達と一緒にいたいと思った。
これが1度は失った私らしさ。
拒絶していたピンクとの距離は、再びゼロになった。