ショッキングピンクは自己主張が強い。だから好きになれない。
でも、それは私の青春の輝きだから、嫌いにもなれない。

学級委員が発表したTシャツの色に唖然とした

私の通っていた女子校の高校では、学年ごとにジャージの色が決まっていた。体育大会前になると、学年でおそろいのTシャツを作るのが恒例となっていた。
先輩の青いTシャツがとても格好良くて、私たちの代は一体どんな風にかっこよくなるんだろうとわくわくしていた。

しかし、私の学年はショッキングピンクに決まったのだった。
私たちの学年は赤色のジャージだった。だから、学年Tシャツを作るときには、赤色系統から6色候補に挙がっていた。
その中には、「まあまあいいんじゃない」と思う色から「これだけは絶対にありえない!」と思う色まであったが、私にとってありえないある1色を除いて、5色の中から選ぼうとするした。候補に挙げられた色たちを見ても、どれもまあまあイケてるだった。
でも、どの色に決まっても私にとってはそこまで嬉しくないだろう。私はフィーリングで朱色に投票したと記憶している。

それから何週間か経った頃、ホームルームで先日の学年Tシャツの色決め投票の結果が発表された。いかにも気合十分という感じで学級委員の子が教卓の前に立つ。
「私たちの学年はこの色になりました!」
そう言って彼女が皆に見せた色に、私は唖然としてしまった。

「ピンクで嬉しいな」と友達。私の孤独感はいっそう深まった

周りの子たちは、Tシャツの色決まってよかったね~とか言いながら拍手をしている。男性の担任も「今年はピンクですか」とはにかみながら言っていた。「あなたもピンクを受け入れるんですね!?むしろ嬉しそうではないですか!?」と正直驚いてしまった。
私以外のみんなはショッキングピンクに順応しているようで、孤独感を感じた。

私はこの決定に不満がある子が私の他にいてほしいと思った。友達ならわかってくれるのではないか。
そう期待を込めて、翌日の昼食時に友達に「ピンクになっちゃったよね」とさりげなく言うと、「ね!ピンクで嬉しいな」という返事が返ってきた。
私の孤独感はいっそう深まってしまった。

「なんかショッキングピンクは私たちの学年に合わないな」となんだか不満に思いながらも、体育祭ではこのTシャツを着た。ちなみに、応援グッズとしてうちわも作るのだが、その色もTシャツと同じショッキングピンクだった。
「これじゃあ全身ピンクずくめじゃん」と肩を落とすも、もう遅い。他の子たちは大声を上げて仲間を応援している。
もちろん、今は大会に参加することが一番大事だ。私もその輪に加わって応援をし始めた。

ピンクが輝いて見えた青春。この色は色あせない

予選、準々決勝、準決勝、決勝と進んでいくうちに、体育館内はどんどんヒートアップしていく。友人が颯爽とバスケのゴールにシュートを決めると大きな歓声が響き渡る。私の学年の誰もが勝利を欲していた。

体育館内に立ち込める感情は、次第に熱狂だけではなくなった。勝負事なので必ず敗者となるチームが出てくる。そのときに友人が流した悔し涙、一緒にプレーできてよかったという感謝の涙に、観ているこちら側も心動かされた。
私も全体の空気に押され、私も歓喜と興奮と悔しさの気持ちで必死に声を張り上げて応援した。

体育館から離れて見ると、ピンクの人々がうねうねと動いているのがぼやっと見える。他の学年の人たちもいたが、ピンクの集団はより濃く見えた。「私を見て!私の頑張りを見て!」あたかもそう主張しているようだ。
いつもだったら主張が強すぎて引いた目でみるけど、その日はピンクが輝いて見えた。

球技大会は全て終わり、私は高校を卒業した。Tシャツは、私が大学生になった今もパジャマとして活躍してくれている。
鏡の前に立ち、ドライヤーで髪を乾かすときに改めて見ると、鮮やかなショッキングピンクが目に映る。何回も洗濯しているのに色あせていない。
きっと、私の青春はこのTシャツにつまっている。だから色あせないのかもしれない。