一年前、ずっと住みたかった街に行きました。
私が好きな本屋さんに、野菜が生き生きしてるスーパーに、コーヒーの匂いが漂う喫茶店に行ったんです。川沿いも歩きました。少しぷっくり太った柴犬と散歩してるおじいさん、三味線の練習をする女の子、なぜか猫の着ぐるみを着てランニングする大学生に、トンビに餌付けするおじさん。みんな思い思いのことをしててすごく幸せそうで、まさに「自由の広場」って感じでした。

私はここに住みたかったんですよね。ちょっと変で個性的な人が好きで、そういう人が集まってる場所に行くと、自分の存在をまるごと肯定されたような気分になれるんです。ここ数年間、ずっと認められたかったんだなって。

住みたかった街はやっぱり素敵。家に帰ると目頭が熱くなった

住みたかった街には、私の一番行きたかった大学がありました。今朝、ちょっと早起きしたから、ふと思い立って電車に乗って行ってみたんです。
「やっぱり校舎きれいだ」「おいしそうなお店ある！」「何サークルの子だろう……」とかワクワクしながら見て回ってました。今日は良い日だったなあって帰路につきました。

それが、お風呂もご飯も何にもかも済まして布団に入ったら、一気に目頭が熱くなっちゃって。「あれ？なんで泣いてるんだ？」って感じですよ。こういう時、ないですか？自分の脳みそが感情に追いつかないの。

私は今日、ずっと住みたかった街に行った。やっぱり素敵な街で、今日一日すごく楽しかった。でも、私はそこの住人じゃないって。
その時、高校でお世話になった先生とか、お互い一言もしゃべらないけど長いこと一緒に教室で勉強してきた友達の横顔、成績が上がった時の家族の反応が、一気に思い出されました。
もう私、大学二回生なのに！何を今頃って感じですよね。ばかばかしくなってきました。

第一志望の大学に落ちたとき、感傷に浸る暇はなかった

二番目に行きたかった大学では、学校の成績も友達付き合いも結構うまくやってました。コロナ禍だけど、それなりに楽しく過ごしていました。
でも、今日初めて気づいたんです。そういえば、第一志望の大学に落ちた時、泣かなかったなあって。

周りに家族がいたからだと思います。父や母に泣いてるところを見られたくなかったんだなと。それから、受かった大学に向けて新生活の準備をして、引っ越しもして、家族にたくさん迷惑をかけて淡々と事が進みました。
あまりにも淡々と事が進んだからかな。感傷に浸る暇もなかったんだなって。
それを思い出した後、高校三年生の時から溜めていた涙を存分に枕に流しました。

今度こそはあの街へ！前回みたいに淡々と過ごす日々にサヨナラを

これが私の眠れなかった夜のお話。
今の私は大学三回生です。早い子だと、もう就活の準備を始めている時期ですよ。どこに就職しようかな、エントリーシート何書こうかなって考えなきゃいけない時が来ました。
「今度こそあの街へ！」と思ってますが、先のことなのでどうなることやら……。

でも、次は絶対に淡々と過ごしたくないんです。泣きたいならマスカラがぐしゃぐしゃになるまで泣くつもりだし、面白かったらイケメンが近くにいても大声で笑い飛ばしてやると。遠足の前日みたいな夜なら来てほしいかな。