自己表現だけは、ゆずらないし、ゆずれない、私の中で一番優先順位が高いものだ。
中学で出会った「美女と野獣」で、ミュージカルに開眼した
特にお芝居。私が最初にお芝居に出会ったのは、上海のインターナショナルスクールで学校のミュージカルに参加したときだ。
インターナショナルスクールでは毎年、学校のイベントとして、ミュージカルを公演することがよくある。日本の学校で毎年運動会や文化祭があるように、インターではミュージカル公演が学校行事として年間予定表にちゃんと書いてある。
全員参加の学校もあれば、やりたい人だけを集めるところもある。
私が中学生のとき通っていたインターは後者で、お芝居をやりたい人、歌を歌いたい人、友達についてきて参加した人、大勢の人とわちゃわちゃしたい人……色んな理由で30名ほどの学生が集まって、1つの作品を半年間に渡って作り上げた。
中学2年生のとき、初めて参加したミュージカルで、本格的に演劇に関わった作品が、ディズニーでお馴染みの「美女と野獣」だった。
美しい容姿に恵まれたベルは本の虫で、村で一番の変わり者。しかし、発明家のお父さんが野獣に監禁されてしまい、心優しいベルは父親の代わりに自分が監禁されることを望む。野獣の城で暮らす中で、ベルと野獣はお互いを尊重し合い、愛を育んでいく。最終的に魔女の呪縛で野獣の姿にされていた野獣が、ベルの愛によって再び人間に戻る、というストーリーである。
「美女と野獣」において、私が担当していた役はSilly Girl というモブ役だけど、物語に欠かせない大事なモブ役だった。野獣のライバルであり、村で一番美しいベルと結婚をしたがっている、大柄な悪役、ガストンの3人のファンの女の子の一人だ。日本語で訳すと、Silly Girlは「おバカな女の子」という感じだろうか。
ガストンは狩りが得意で、筋肉質であるため、女子人気が高いのだが、頭が悪く教養がないので、ベルはガストンに全く興味を示さない。私はベルと違って、ガストンに夢中で、「ガストンかっこいい!」と投げキッスをするような、おバカなおっかけを演じた。
ちなみにエマ・ワトソン主演のミュージカル映画とディズニーのアニメーション映画の両方にしっかりと登場する、プロのモブ役である。アニメの方ではSilly Girl1が赤、2が黄色、3が緑とちゃんと担当カラーさえある。
私はSilly Girlsにおいて、おそらく一番熱烈なファンであるSilly Girl1を担当していた。
帰国して大人になった今も、舞台は自己表現に欠かせない手段
ミュージカルでおバカなおっかけの役をSilly Girlsの3人で演じて、3人だからこそ奏でられるハーモニーを歌えたことがとても楽しかった。さらに「美女と野獣」のストーリーと歌が感動的すぎるので、私はすっかりミュージカルの世界にハマってしまった。
また、一度ハマると深く研究しまくる性格のおかげで、同じミュージカル部でミュージカル好きの親友ができたし、「オペラ座の怪人」や「レ・ミゼラブル」など、たくさんのミュージカル作品を観るきっかけにもなった。上海のインターナショナルスクールでのミュージカル経験によって、私にとって自己表現が自分にとって欠かせないものとなった。
高校1年生のとき、日本に帰ってきて、現在に至るまで、日本に住み続けている。
日本の高校ではミュージカル部はなかったが演劇部があって、ストレートプレイ(セリフだけの舞台)にも挑戦した。
大学では自分のために演じるだけではなくて、人のため、世のために演じたいと思い、ボランティアとしてミュージカルを演じた。保育園、幼稚園、小学校、障碍者施設、高齢者施設などを訪れ、社会的弱者の方々のために子供向けのオリジナルミュージカルを上演した。
現在はコロナの影響で、演じられる機会はなかなかないのだが、文章を書くことで自分の気持ちを整理して表現する活動をしている。
書き続けることで、きっと演劇につながる何かがあると期待しながら、もう一度舞台に立てる日を待ち望んでいる。