3年半前、1通のメールを「送る」決断をしたから、今の私がある。
そしてその後、別の1通のメールを「送らない」判断をしたから、今私はここにいる。
そのメールはどちらも、Gmailで文面を作ってから、3日ほど送るか否か考え込んだ。
結局送信ボタンを押したのが1通目で、2通目は今も未送信ボックスに塩漬けになっている。
このメールを入力した背景を思い返す。
入社前の配属面談。東京だけで生活するのは面白くないのでは
大学4年生の秋のこと。
内定をもらっていた企業と、翌年春からの配属を決める面談を行った。その面談は、自身の希望職種や携わりたい事業領域について意思を伝える場だった。
一通り自身の希望を伝え、大方春からの職種、事業領域が見えたところでなんとなく、「勤務地は東京がいいです」と伝えた。新入社員の8割方は東京勤務だが、念押しでの伝達だった。それを聞いた人事は少し残念そうな顔をしたが、承諾した様子だった。
面談後、ふと想像してみた。自分は大学生活で東京に拠点を置き、東京で友達をつくり、新しく刺激的なものに囲まれて生活をしてきた。
新卒で入った会社で東京配属だった場合、国内での転勤はなかなか見込めない。おそらくほぼ一生東京でのみ生活をすることになる。それはそれで面白くないのではないか。
こう考え、面談をしてもらった人事に対して1通目のメール「やっぱり東京だけでなく全国で配属を検討してください」を送った。
はた迷惑な話だが、このメールを送ってからさらに悩んだ。2通目のメール「やっぱり東京だけで配属先を検討してください」を入力し、送るか悩んだ末、結局やめた。
始まった名古屋での生活。仕事も恋愛もうまくいかなかった
半年後、入社直前の2月、配属先発表の連絡で「中部配属」ときっぱりと告げられた私は、名古屋での生活を余儀なくされた。
自分の発言が一因になったとはいえ、名古屋での生活には最初から不満たっぷりだった。
そもそも大きな田舎、と言われる愛知県はやはり東京に比べ、先進性は劣る。
名古屋で生活することになり、当時の彼氏と別れたり、友達となかなか会えずに寂しい日々を送ったり、辛い思いも味わった。仕事も恋愛もうまくいかず友達もいない。刺激も足りない日々を過ごし、名古屋という土地を呪った。
なんのために自分は名古屋にいるのか本気で悩み、配属決定の要因になったメールの送付を悔やんだこともあった。
どんな環境でも、日々をきっちり楽しんで生活できる自分に気づけた
しかし、今となっては名古屋に来られてよかった、と断言できる。
理由は、ここに来て将来を考えられる彼氏と出会えたこと、離れても親しくできる友達を持てている、と実感できたこと、新しい趣味に没頭し、大いに楽しめていること、等さまざまある。
しかしなによりも、どんな環境でも楽しんで生活できる自分であると気づけたことが1番の理由だ。
東京でなくても、面白いことは探せるし、素敵な人たちにも出会える。遠い友達とも親しくしていられる。そんな自分に少しずつ変身していったのか、考え方が変わっていったのかはわからない。
今後、自分はしばらくこの地にいるかもしれないし、海外で生活せざるを得ない状況になるかもしれない。10年後の自分がどこにいるのか想像ができない。
ただ1つ言えるのは、どこにいても自分はそこでの日々をきっちり楽しめているだろう、ということだ。
このように思える自分になれたきっかけである、当時のメール「やっぱり配属先は全国で検討お願いします」を送る決断をした自分と、それを受け入れてくれた関係者の皆様に感謝をしたい。