男女間での友情は成立しない、という言葉がある。男と女が一対一になれば、必ずそこには友情ではない感情が生まれる、という意味なのだろうか。一対の男女を見ればすぐに恋愛に結びつけたくなる野次馬根性が、そうさせているのかもしれないが。

ある宗教に熱心な男性と意気投合。頻繁に連絡を取り合っていた

まだお付き合いをしたことはないし、したいと思った人に出会ったこともないが、私の性的指向は男性のはずである。
けれど、私は男女間で友情を成立させたい人間だ。だから、仲良くしたいと思った男性には、あなたとは良い友達でいたい、と伝えることにしている。

私はいい友達として末永く仲良くしたかった。けれど、相手は私の言動を恋愛が絡んだものだと誤解してしまった。こんな行き違いのせいで、友人をひとり、なくしてしまったから。

相手は同い年の男性で、ある宗教の熱心な信者だった。私はその宗教を信仰してはいなかったけれど、その宗教に対しては特になんとも思っていなかった。
彼とは出会ってすぐに意気投合して、頻繁にチャットをしたり、電話をしたり、手紙やプレゼントを贈りあったりした。

最初に出会ったのが高校生のころで、勉学に忙しかった私には、恋愛をする余裕はなかった。彼もそうだったようで、仲の良い友人のひとりとして、いろんな話をする間柄になっていった。

「結婚するなら入信してほしい」と彼。ずっと友達のつもりだった

違う大学に進学してからも交流は続いた。ほぼ毎日チャットでおしゃべりした。
彼の信じている宗教についても教えてもらった。規律や決まりがこまごまあってきびしいわりに、突き詰めれば「人にやさしくしましょう」というひどく普遍的な内容ではあったけれど。
彼の話は機知に富んでいて面白かったし、この関係がずっと続けばいいと思っていた。けれど、それはかなわなかった。

ある日、彼が、
「あなたと結婚する気があるのかどうか親に聞かれた。結婚するなら入信してほしい」
と言ってきた。
ずっと友達のつもりだったし、これからも今まで通りでいたい、と私は言ったが、彼は取り合ってくれなかった。

彼の信じている宗教はとても男女交際に厳しかった。だから何を言っても、友達であっても一対一で話すのはあまりよくないとされているから、そろそろけじめをつけたい、の一点張りだった。

仲良くしたい男友達には「あなたは私の大事な友達」と示す

私は彼に、あなたとは結婚する気はないと告げた。確かに仲は良かったけれど、結婚したいとは思わなかったし、入信したいとも思わなかった。
そうしたら、あんなに途切れることなく続いた連絡は、あっさり途切れた。

彼との関係は、宗教が絡んでいたから仕方がなかったのかもしれない。でも、恋愛対象になる可能性をはらんだ関係は、行き違えばこじれてしまうのだと学んだ。だから、私はずっと仲良くしたい相手には、「あなたは私の大事な友達だよ」と言葉と態度で示すのだ。

恋愛の可能性を壊す愚かな行為に見えるかもしれないが、このおかげで、件の彼以降にできた男友達とは、比較的良好な友人関係を維持継続できている。