今はすっかり秋めいて、気づいたらいつの間にか冬になってしまう。季節の変わり目も早いが、人間関係も環境が変わればすっかり顔ぶれが変わってくる。
私は今19歳、大学2年生である。自慢できることなど思い返すと微塵も感じたことがなく、せいぜい自分の胸の内にしまってしまう。しかし、そんな私にも誰かに話せる機会を得て、このエッセイに思い出の欠片を残したい。
「あなたは正しかった」。喧嘩別れした友達と、偶然の再会。
「喧嘩した友達と和解したい」と今から約3年前のこの時期に、何度思ったことか。けれども私はそのタイミングを逃し、けんか別れした友達とは疎遠になってしまった。
大学生になったものの、去年は全てがオンライン授業で上京する理由を失った。そのまま地元に残った私は、その友達と街中で偶然に再会した。それは約3年ぶりの再会であった。私たちは過去の別れについてあまり触れることなく、懐古の気持ちで相手に接した。
会話が盛り上がり、そのまま意気投合して喫茶店へ入った。私は会話を楽しみながらも、あの日のことを振り返りたい。どのようにその話をカットインしようか、とタイミングを模索していた。
しかし、その友達が突然黙り込んでしまったので、私はアイスコーヒーを飲みながらその様子をしばらく伺っていた。
数分経っても気配が変わらないので、「どうしたの?」と聞いてみた。友達は目線を私からそらし、うつむいて言った。
「あなたは正しかったのよ、私が幼すぎてちゃんと理解してなかったの」
私は友達の言っている意味がすぐにわかった。
女子だけの高校で、彼女からの恋愛感情に本当は気づいていた
あの日、私たちが仲違いをした日、それからその友達とは全く喋らずそのまま卒業してしまった。私はあの日を忘れたことはなかった。私がかけた言葉を何回、何十回と反芻し、私の過ちをどうにか戻せないかと後悔していた。
「あなたが他の人と仲良くしているのを見て、いままで言えなかったけど、あの頃の私はあなたを恋愛対象としてみていたの。あなたは知らなかったと思うけど」と、友達は声を上ずりながら、うつむいて話した。
友達と私は同じ高校で、それも女子だけの高校だった。あの頃は、同じクラスメイトかつ席が近かったこともあり、その友達とは仲の良い関係だった。
当時の私は今よりももっと活発でボーイッシュだった。何回か目線を感じることもあったが、それは恋愛とは別物の、仲間としての信号だと思っていた。
だけど、いつからか私はそのことに気づいていたし、特別それ以上の関係になりたいとは思わなかった。
あの時、私は間違っていなかった。彼女を傷つけたくなかったから
異性の代わりとして見られていることに不満はなかったし、羨望の対象であったことも正直恥ずかしくもうれしかった。日に日に感じる好意を無下にしたくなかった私は、その友達と少し距離を置くことを決め、特に理由も告げずに一定の距離をとることにした。
だから、その友達が私に問い詰めたことをちゃんと説明できなかったことは、それまで誰にも話すことはなかった。
そして、この偶然の再会で、友達と私の関係は、前より大分フラットで親しみやすいものに変わった。新しくした携帯にその友達のメールアカウントを登録した。あの頃は、回し手紙の思い出でさえ私を心苦しく悩ませたのに。
その日から大体1か月がたって、その友達の彼氏との恋愛話をたまに相談されたりする程度だ。あの頃の自分は何が正しいのかわからなかった、けれども今はわかる。すべての感情を言葉にはできないし、言葉にする必要がない時もある。自分から距離をとることは難しいことだけれど、あの時は相手を間違っても傷つけたくなかった。
そして「あの時、私は間違っていなかった」と、その喫茶店を見かけるたびに思い起こす。