私は、悩みをよく相談される。
それは、悩みを持ってる人と同じ目線に立って、あたかも体験しているかのように感じ取れる、という才能があるから。
そんな私から出てくる言葉には、本人と同じくらいの同意や気持ちの重さがある。
この特性を持つ私だからこそ経験できた、1週間眠れない夜があった。
電話越しでも分かる暗さ。海底を歩いているような闇だった
それは親友が男性に振られた時。
彼女はとても落ち込んでいた。
いつもならくだらないことを送り合って笑うのに、そのテキストだけ悲しい青のような、海底の黒のような雰囲気をまとっているようにも見えた。
いつも来るLINEと違うのがすぐにわかった。
「振られた」
そう書いてあった。
すぐに電話して「大丈夫?……なわけないな」と話した。
彼女はしばらく無言だった。
電話越しでも分かる暗さ。それは海底を歩いてるような闇だった。
その無言に私は只事じゃない、と思った。
「大丈夫?話せそう?」の問いに、彼女は少しずつ話し始めてくれた。
彼との思い出や、されて嬉しかったこと。彼に渡すプレゼントがあったこと。彼のお母さんに贈り物をしていたことなど、2人には沢山の思い出があった。
私は黙って聞いていたけど、2人の間に愛があることは確かだった。
その愛に感動したと同時に、なぜ離れることになってしまったのか疑問で仕方なかった。
でも、私はそれを問うことができないまま話を聞き終え、電話を切った。
その後、彼女からは「ありがとう」と一言LINE。
あ、これはとことん一緒に海底を歩かないと、この子は最悪の選択をしてしまう、と直感で思った。
そこから私は、一気にその子と同じ目線にフォーカスし、一緒に海底を歩いた。
私とのルーティンや家族の支えもあり、少しずつ回復する彼女
その頃の彼女は、寝たら必ず彼の夢をみてしまい、それで目が覚めるというサイクルが起きていた。
そのせいで彼女は眠りが浅く、短い時は20〜30分しか寝ていなかった。
そして彼女は眠るのが怖くなっていた。
忘れようとしている、忘れた方がいいことは分かっている、なのに夢に出てくる。
そんな夢、眠れなくなるに決まってる、と私も心が痛くなった。
そして、ただでさえ眠れていないのに、それに加えて食欲もなく、彼女は何も食べていなかった。
それを心配した私は、せめて甘い飲み物でカロリーを摂って!とスタバのチケットを送った。
「生きてほしい」という私からの願いでもあった。
チケットを送った後に来る、彼女からの「今日はこれを飲んだよ!」の報告のメッセージにとても安心したのを今でも覚えてる。
それからまた夜が来たら、彼女が安心するまで何時間も夜中まで電話。それが私たちのルーティンになった。
家族の支えもあり、スタバを含め外に出してくれていたようで、気分転換になったのか、落ち込んでいるLINEも減ってきて、電話で話すごとに少しずつ元気になっているのが声色でわかった。
それがわかった時は本当に嬉しかった。
いつも私を支えてくれてる彼女の助けになれたことが、本当に嬉しかった。
悩みに付き合った結果、自分の這い上がり方がわからなくなる
ただ、彼女の回復とは裏腹にその時、私に問題が起きていた。
彼女は海底から水面へ向かっているのに、同じ目線に立った私はまだ海底を歩いていた。
同じ目線に立てるはずが、いつの間にか置いていかれていた。
長く悩みに付き合っていた結果、自分の這い上がり方がわからなくなってしまったのだ。
とても苦しく、息が出来ない感覚に襲われ、どうしたらいいのかわからなくなり、自分のことを客観視できなくなった。
ただ、それを彼女に伝えるわけにもいかなかった。そのせいでまた海底に戻ってきたら元も子もない。
今までの時間がなかったことになる。
そう思った私は、別の人にこういうことがあった、上に上がれない、助けてと説明をせずに、片っ端から友達に電話を掛けて出てくれた人にそれを話そうと思った。
友達に連絡していなければ、今も海底を歩いていたかもしれない
しかし、それが出来なかった。
唯一何でも話せる2人に「電話できる?」と一言だけ送ることしか出来なかった。
そのうちの1人は、出掛けていて帰ったらできると。
もう1人は、返事なしに電話をかけてきてくれた。
その電話に出た瞬間、私は涙が止まらず泣きながら電話をした。
その子はたまに相槌を打ちながら、静かに話を聞いてくれた。
落ち着いた頃に電話を切り、「ありがとう」と一言お礼をした。
その返信は「あなたは優しすぎるくらい優しいから、あまり深く入りすぎないようにね」という私を気遣った返信だった。
その友達のお陰で、私は一気に地上まで出たような気持ちになった。
その友達に連絡していなければ、私は今も1人で海底を歩いていたかもしれない。
そこからは私も回復し、同じ目線に立つだけではなく、自分も助けてあげられるようにしなきゃ、と反省を含めた体験になった。
そうして私の1週間に渡る、眠れない夜は終わった。
今は2人とも回復できて良かった、と心から思う。
後日、完全回復した彼女から「あの時は本当にありがとう。電話に付き合ってもらってなかったら、最悪の選択をしていたかも」と言われた。
私の直感は当たっていた。
そこからの私たちは、言うまでもなく仲が更に深まった。