人の声や車の音が遠ざかり、外は静かになっていく。今日も無事に1日を終えた安堵と、明日も穏やかに生きていけるだろうかと不安に駆られながら、さあ寝よう、と部屋の電気を消す。
目を凝らして見える、見慣れた私の部屋。
窓から差し込む月明かりは、私を見守っているような、喝を入れているような。
今日もお疲れ様。明日も頑張りなさい。

たまに、こんな日がある。
理由は分からないけれど、目頭が熱くなって自分の胸を軽く叩いて「大丈夫、大丈夫」と言い聞かせる、そんな日が。
それは、まるで試合前のゴングのようで、気づくと涙があふれて止まらなくなる。

ずっと恋人がいない。その事実が私を眠らせない夜がある

私は恵まれた環境にいると思う。
社会人一年目となった今も実家暮らしで、家族は鬱陶しいと感じてしまうほど仲が良く、週末は自分の好きなことをしたり、友人と会ったり、仕事は大変だけれど同期は優しく切磋琢磨し合える仲で。
何か一つあなたに与えてやろう、と神様に言われても、考える時間をください、と首を垂れるだろう。

ひとつ、あまり触れてほしくない私の部分といえば、恋愛に関することだろうか。
私には恋人がずっといない。もうそれは、ずっと、だ。

自分で言うのは恥ずかしく、自信過剰のように捉えられると、それはそれで辛いのだが、私のことをあまり知らない人からは、「彼氏、絶対いるでしょ」「モテるでしょ」「今、彼氏いなくてもすぐにできるよ」と言われることが多々ある。
素直に嬉しいと感じるとともに、泣きそうになることもある。

彼氏がいないと、どうして慰められるような言葉を言われなくてはならないのだろう。
ずっといない、と伝えると、「やばいね」「逆にすごい」「なんでいないの?」このような言葉を言われるのは結構面倒くさい。
その場は愛想笑いで誤魔化したり、「だよね」と同調したり、どうにか自分を守っているけれど、夜、一人になって、ふとその言葉たちを思い出すと結構辛い。

付き合ううちに、好きになる。私もそう思えたら楽なのだけど

今まで恋愛経験が全くない、ということではない。
好きな人はいたし、告白もされたことがある。
モテ期かも、と舞い上がった時期だってある。
それでも、付き合いたいと思う人から好かれたことはない。

告白してくれる人が、嫌というわけではない。
ただ、好きになれないのだ。
「今は好きじゃなくても、付き合ってみたら好きになるかもよ」
よく言われる言葉、第一位はこれだ。
そんなことは分かっている。
恋愛経験の少ない私でもよく分かっている。

付き合っている人たち全員が、お互い好きで好きで堪らないから付き合っている、そんなおとぎ話は存在しないだろう。
告白されて、生理的に嫌な人ではないし別にいいか、あれ意外と良い人かも、今は結構好きだな、私の友人はこういうパターンが多い。

羨ましいと思う。
私もそんな風に思えたら、どれだけ楽か。
私のことをよく知らない人に、勝手に慰められて、勝手に人を勧められて、勝手に純粋だと決めつけられて、悔しいな、なんて思うこともなくなるのに。

恋愛や仕事、人間関係。勝手に誰かと比べて落ち込んでしまう夜

ベッドに横になって、そんなことを今日も考える。
なんだか、うまくいかないな。
恋愛に限らず、仕事でも人間関係でも何もかも、誰かと比べて、勝手に落ち込んで、自分のことが嫌になって、過去も現在も未来も、全て靄がかかったように見えなくなる。
何を思って感じて考えて、窮屈な毎日を打破する秘密道具なんて存在しないのに、夢見がちな私の視界は今日も滲む。

眠れない夜はあと何回くるだろう。
その度に私は何を思うだろう。
少しでも成長していれば、いいけれど。
強く逞しく、穏やかに緩やかに、これからも夜を過ごしていく。