眠れない時は、だいたい興奮するようなことがあった時が多い。あぁ、今日は眠れない……。明日仕事なのに。

目の前で転倒した高齢の男性。思わず声をかけた

2022年5月13日金曜日。天気は雨、しかも土砂降り。この日は9時から16時まで日雇い派遣の仕事だった。
土砂降りだったけど自転車で通勤した。そして給料日だったので親に渡すお金と娘関係の支払い、自分のご褒美のために銀行に行きお金をおろした。欲しかった少し高いヘアケアグッズを買い、GODIVAのショコリキサーを飲んで一服してから家に帰ろうとした。

土砂降りなので慎重に自転車を漕ぐ。交通ルールもいつも以上に守る。踏切を越え最後のミッションの橋を越え坂を下る。坂を下って右に曲がる近道を行こうとしたら目の前で近くのスーパーで買い物帰りの高齢の男性が転倒した。

介護職をしている私はこのように転倒して痣を作ったり骨折する高齢者がいるのだなと思った。かなり激しく男性は転倒されたので自転車を停めて男性のところに行った。
「大丈夫ですか」
私は聞いた。「大丈夫」と彼は答えた。反対側に自転車を停めて中年の女性も彼のもとに来た。
「大丈夫ですか」と同じく彼女も聞いた。「大丈夫」彼は答えた。彼女は「気をつけてよ。さっきもスーパー内で3回くらい転んだじゃない」と彼に注意した。

知らない中学生と家まで送り、さらに町会長のもとへ

ゆっくり立ち上がり彼は家に帰ろうとしたが、また転倒した。前転が失敗したかのような転倒だった。
額から血が流れている。私は彼の後ろで自転車を押していたのでまた彼のもとへ行った。
「大丈夫ちゃうやんか!病院行こうや!血出てるやんか!」
「行かんでも大丈夫やねん!」
「救急車呼ぶし、近くの病院行こうや!」
「ほんまに大丈夫やし、家近いもん」
「おっちゃん、なら絆創膏だけ貼ろうや。薬局あるから待っててな」

彼が転倒したのは薬局前だったので私は走って薬局に行き絆創膏を買った。また勝手に歩いて転倒することが怖かったので薬局の店主にお釣りはいらないと言った。
男性のもとへ向かうと中学生の男の子がいた。彼は道に座り込む額から血を流した高齢男性を気にかける優しい子だった。

男の子はティッシュを私に渡し私は男性の額に絆創膏を買った。男性は酔っているだけで家は近所と言ったので私たちは彼を家まで送ることにした。私は男性の歩行介助をして、男の子には男性の荷物を私の自転車のカゴに入れて押してもらった。

話をしていると男性は一人暮らしでよくお酒を飲んでいるとのこと。ほどほどにしてねと言い10分くらいで家に着いた。
鍵はかけておらずそのまま部屋の中に入ると物は少ないが散らかっており、お酒の小さな紙パックが転がっていた。部屋からは寂しさを感じた。

布団に男性を座らせた。とりあえず誰かに報告をと思い、彼から近所付き合いについて尋ね、町会長の家に行くことにした。
男の子は近所の子だから近道を案内してくれた。町会長の家は近くだった。
幸い在宅であり呼び鈴を鳴らす。女性が出る。かなり警戒されているようだった。事情を説明して夫である町会長をすぐ呼んで下さった。愛想の良い方だった。事情を説明して私たちは帰った。

帰り道大事なのになぜか微笑ましかった。
見ず知らずの高齢者を見ず知らずの中学生と一緒に自宅まで送る。大変だったがどこか和気あいあいとしていた。一緒にいたのが中学生だったこともあり、一人でないことが心強く冷静に行動が出来た。介護職と町会制度の知識を生かせたことも何より嬉しかった。
普段ない出来事だったので眠れなかった。
もし次同じことが起きたら?私は今日以上に行動するだろうな。