今回、女性の声が集まるこのWebメディアで叫びたいことがある。
いち早く緊急避妊薬を薬局に置いてほしい、というものだ。

私はうつ病を治療している20代前半、一般女性。
でもこんな私が発する「社会のなか耳も傾けられない小さな声」を拡張機のように広げてくれるかもしれないWebメディアの力を借りて、過去に私が体験した”合意なしに避妊具をつけず性交渉を強いられた経験”を話したい。
今この時に、同じような経験で「妊娠していたらどうしよう」と悩む誰かと苦しみを共有できたらいいし、薬局での緊急避妊薬販売の実現を強く望む一般女性の一例をここに残したい。

家に帰りたくなくて、アプリで夜遊んでくれる人を探した

合意がないまま避妊具なしの性行為をした相手は、マッチングアプリで知り合った40歳前半の男性だ。彼はメディアに出ることがあるような芸能関係の仕事をしている。
もう、これを読んでくださっている方がツッコミたい疑問はこれだろう。
「なんで知らない男性と性行為をするの? 怖すぎるでしょ?」という疑問だ。

当時、私はうつ治療のなかでもセカンドステージの「精神的苦痛が頻繁に起こる時期」にいた。
治療初期はうつの感情が感情としてではなく、倦怠感や手足の痺れといった身体症状として現れることが多い。治療が進んで、当時は毎朝理由のない苦しみや希死念慮が起きていた。
一人で家にいるとネガティブな考え事をしてしまいがちだったので、気晴らしに誰かと出かけるようにしていた。同年代の友達とも会っていたが、それでも誰か一緒に話をして気晴らしさせてくれる人を探していたし、前の日には母と大喧嘩したのでどうしても家に帰りたくなくて、アプリで夜に遊んでくれる人を探した。

この日は土曜日だった。たまたま夕方まで友達といた場所から近い場所に住む彼がメッセージをくれたので、どうせヤリモク(セックス目的で女性と会う男性)だろうと勘づいていたものの、朝まで一緒にいてくれるというメリットを取って会うことにした。
夜ご飯を外で食べながら、20歳以上年上な彼は私の病気の話を寄り添うように聞いてくれたり、彼の人生経験を話してくれてとてもその場は楽しかった。
私が「帰りにコンビニでアイス買って食べたい!」というと、一緒に彼も買って食べてくれたのを覚えている。笑

オンライン診療を受信。薬を飲めたのは「約60時間後」だった

アイスを食べ終わると、やはりその場の雰囲気が変わり性行為をすることになった。
ただ彼はコンドームが肌に合わない体質で、基本的にピルを飲んでいる女性とコンドームをつけずに性行為をしていると言う。
ピルを飲んでないため避妊をしてほしいと伝えると、最初は痛みを我慢してゴムをつけたのだが、やはり痛みに耐えられず外して精液を外に出して性行為が終わった。
そもそも、彼は私がピルを飲んでいないことに驚いていたが、生理痛がどんなにきつくても毎日飲まなければいけない抗うつ剤との飲み合わせが悪いとの噂が怖くて手が出せないのだ。あと、ことが始まってから打ち明けられても逃げれないし、相手は男性だから力の差を考えると暴力などを想像してその場でNoと言えなかった。
翌朝、不安が止まらない私に対し、前日の居酒屋の話を通じてとても優しい大人だと信じていた彼は「え、中に出してないしアフターピル飲めば大丈夫でしょ?しかもあれってほんまに小粒のやつなんやで!笑」と言った。

翌日は日曜日だったためほとんどの病院が空いておらず、オンライン診療サービスを使って翌々日に薬が郵送された。
電話での診療だったので医師に踏み込んだ相談ができなかったし、アフターピルは性行為後から時間が経つほど避妊成功の可能性が下がるのに、結局薬を飲めたのは「約60時間後」だった。
薬局で売っていたら、「1時間以内」に飲めてた。

また、副作用の吐き気や下痢で薬の成分が体外に出てしまうと避妊は失敗する可能性がある。
私の場合、常時服用している抗うつ剤や抗不安剤との飲み合わせがとても悪かったらしく、服用から4日間お腹を下したので避妊が成功したとは思えなかったし、そのストレスでうつの症状は治療のファーストステージ段階のものへと戻った。

あぁ、もう二度と会わない彼との子供を産まなくていいんだ 

結局、避妊成功を意味する生理が来たのがわかったのは性行為の日から1ヶ月後の駅のトイレの中だった。
そして都内の人の流れが多い主要駅のホームで一人、大号泣した。
あぁ、もう二度と会わない彼との子供を産まなくていいんだ、と。

余談だが、最近彼が出演している広告動画をSNS上で目にした。
病気で働くことができずに悔やむ私は思わず、女性を無下に扱える倫理観の彼が仕事を貰えている様と自分を対比してしまった。なんて世知辛いんだろう。

日本で緊急避妊薬が薬局で買える仕組みを作らないのは、行政側による薬の悪用への懸念だという。私は政治家に直接このエピソードを話した後、面と向かってこう尋ねたい。
「悪用より、望まない妊娠で苦しむ数多の女性に心を痛めないのですか?」

時々ニュースで、望まない妊娠をして公衆トイレなどで一人出産して乳児遺棄し、女性が逮捕されたと報じられるが、彼女が自分の身体から生まれた子供を遺棄することを本気で望んでいた訳がない。彼女らにも心があるんだから。
正直、こういった事件で女性だけが逮捕されるこの社会に私は絶望しそうだ。

お偉いさん、お願いだから、すぐに緊急避妊薬が変えるような仕組みを1日でも早く作ってください。