布団に入っても寝られないのが異常だと、10年経って気づいた

小さいときは、眠れない状態がまさか睡眠障害だとは思いもしなかった。
しかし20歳ぐらいになり、メンタルクリニックを受診すると、れっきとした睡眠障害だと判明。布団に入ってから2、3時間寝れない状態は、異常だったのだと10年経って初めて気づいた。
加えて私は、叫ぶような寝言をいう習慣があった。むにゃむにゃと小さく言うのではなく、近所中に響き渡るぐらいの奇声をあげるらしい。私は眠っているので全く覚えていないのだが、母曰く、「うちはホラーハウスだと近所から思われている」。
クリニックの先生にひどい寝言に関して相談すると、寝言も睡眠障害による症状だった。寝言をいうと、寝ていても脳がずっと起きている状態だそうだ。

眠れない夜を経験していた幼少期から10代まで、私は空想の世界に入り浸ることで時間をつぶしていた。
読書が大好きだったので、自分が本の中にもう1人の登場人物として入ったら、どんな感じかなとか。私が登場人物の妹だったら、カノジョだったら……と、本編には描かれない世界線を勝手に繰り広げては楽しんだ。
また、ハマっているアニメが終わってしまった時、物足りない気持ちがして、アニメのその先を空想した。登場シーンの少ないキャラクターが普段どんな生活をしているのか想像してみたりもした。布団を被ると無限に想像の世界が広がるのだ。

アンティークテイストのドレス姿で戦う人形に魅了されて

中でも記憶に残っている思い出として、ローゼンメイデンというアニメに自分が登場したらどうなるかという空想だった。
このアニメでは7体の喋れるお人形さんが登場するのだが、たった1体の人形しか、完璧なドールとして人形師(お父様)に認められることができない。そこでお人形さん同士が完璧な人形を目指し、色んなパワーを用いた戦いを繰り広げる。一言でいうと、アンティークドールのバトルものである。
ゴシックロリータが好きな私は、アンティークテイストのドレスを身に纏って戦う人形たちに魅了され、新しいキャラクターを加えたい気持ちになった。

ローゼンメイデンでは、赤のお人形である「真紅」と黒のお人形の「水銀燈」のバトルが主に描かれている。真紅は正義を貫くヒロインで、水銀燈は真紅の正義を嫌う悪役だ。
どちらも完璧なドールを目指して戦うのだが、実は水銀燈は腹部がなく、未完成品として作られた人形だった。
私は水銀燈に深く同情して、水銀燈の妹分キャラを頭の中で思い描いた。7体の中で一匹狼な水銀燈に、もしも1人でも味方がいたら……と。

そこで私が思い付いた人形が、正義でも悪でもない、中間にいる真っ白なお人形。彼女の持つ力は歌で、歌うことで戦いを繰り広げる。水銀燈のそばにいて支えてあげる一面もあれば、真紅と他の5体の人形とも楽しそうにはしゃぐ一面もある。どっちもそれぞれの正義があるから、両方の味方になる、そんな仲介者的な役割だ。

今は昔のように空想する間もなく寝られるようになったけれど

今思うと、私自身が平和主義で仲介者的な性格を持っているから、このキャラクターを思いついたのかもしれない。
16personalitiesという性格診断テストによると、16の性格のうち、私は仲介者型の性格だった。「赤毛のアン」のアンや、俳優のジョニー・デップも同じ性格タイプらしい。知らないうちに、自分自身を物語に含めていたんだなと不思議に思う。

眠れない夜、自分の想像力が私を楽しませてくれた。布団の中にいながら、本やアニメの世界に連れて行ってくれた。
今はよく寝られるように、メンタルクリニックの先生から睡眠の薬をもらっているので、昔みたいに空想をする暇なく寝られるようになった。
眠れない状態はとても大変だったが、感受性が強いからこそ本やアニメで感じた感動や美しさを想像に投影できた。眠れない状態には意味があったのだなと、大きくなってから初めて気がついた。