今、私にはセックスフレンドがいる。私にとっては、彼が本命で、真剣に愛している。
おそらく彼もそれを知っているのだが、いまは彼女を作らずに自分の夢を叶えたいというフェーズなようで、ただただ彼と一緒にいたい私は、彼の気持ちを尊重して中途半端な関係を続けている。
彼の夢を応援したい。彼女でなくても、私は彼の「ファースト」
彼はサラリーマンとして働きながら、新サービス・商品企画などのビジネスコンペに応募している。すでに何件も入賞しているのだが、社会にインパクトを与えるようなものを生み出すのが彼の夢らしい。
私は、彼のクリエイティブな発想力が好きで、尊敬している。彼女ではなくても、彼のファーストであることが嬉しい。
そして、彼の邪魔は絶対にしたくない。だから、必然的に彼と会うのは木曜日の夜が多い。土日をビジネスコンペの作業時間に充てるためだ。
彼と会う前日、水曜日はいつも幸せに満ち溢れている。何の服を着ていこうか、何色のマニキュアを塗ろうか。とっておきのパックをして、ボディークリームを塗ろう。彼はどんな反応をしてくれるんだろうかと、にやにやして、想定問答なんかも一通りしてしまう。
そして、大抵前日に詳細を決めるので、そろそろ寝ようかとベッドに潜り込んだタイミングで、彼からの電話がかかってくる。彼の名字が画面に映った時、来た来た、とニヤリとしてしまう。
何気ない日常会話からはじまって、明日は何時くらいにしようかとざっくりと決める。じゃあおやすみ、また明日ね。耳元でする彼の声に、明日は隣に彼がいるという事実に、胸が高鳴って全然眠れない。
就業中も彼の存在をそばに。この怠け癖は幸せな時間を楽しむ才能
彼の貴重な時間を守るため、私がいつも彼の家に赴く形になる。仕事を無理やり終わらせて、20時ごろに合流。一件目は居酒屋で、二次会は彼の家というのがお決まりのコースだ。
私も土日休みなので、金曜日は当然勤務日である。木曜日は彼と一秒も早く会うためになるべく明日に回せる業務は放棄するので、必然的に金曜日に業務が偏ってしまう。
在宅勤務がメインというのがありがたいところではあるが、金曜日の朝に目を覚まし、何度目かの行為をして、彼の家を出て、家に着くのは始業時間にギリギリ間に合うというタイトなスケジュールが常だ。家に着き、手を洗い、PCを立ち上げてタイムカードを打刻すると、まだ朝なのに、達成感と疲労感に満たされてしまう。
さらに、私には日記を書く習慣がある。就業時間にもかかわらず腱鞘炎になるくらいの筆圧で、彼と何を話したか些細なことまで忘れないように事細かに記す。そうすると、彼との時間を再び追体験したような気持になって、何度も彼に抱かれているような気持になる。
ゆえに、仕事がますます手に着かない。キーボードを叩く自分の指ですら、彼にいつも形がいいと褒められるなぁ、とすべてにおいて彼に紐づけてしまう。
お昼ご飯を食べて、なんとなくエンジンがかかってきて、定時である18時を過ぎると、急に現実に引き戻され、あぁ、またやってしまったなぁと思うものの、この怠け癖は世界で一番幸せな時間を長々と楽しめる才能だと開き直ることにした。