初めて会社にTシャツを着て行った日、少し気恥ずかしくもあり、でも嬉しい気持ちで同僚とお互いの私服を「いいね」と褒め合ったのを覚えている。

最近は、スーツ着用必須としない会社が増えてきて、職場というものに感じていた親しみにくさがだいぶ軽減されたと思う。
なんとなく、会社に向かう足取りも軽くなった。
自分の会社のことをより好きになったし、同じようにカジュアルな服装OKとしている他の会社に対しても良いイメージを持つようになった。
炎天下の中でスーツを着なくてもいい。
靴擦れがひどいのに無理してパンプスを履かなくていい。
会社が社員を信頼して服装を自由にしてくれたことが、社員の働きやすさにフォーカスしてくれたことを、素直に嬉しく思った。
いい会社だな、と思った。

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スーツを着なくなったことで、会社に血が通ったようにも思う。
今までスーツを着ることで、ビジネスマンとしてある意味武装して仕事に取り組むことが出来ていた。
でも、スーツを脱いで、普段着に近い格好で仕事をすると、なんとなく素でいられるというか、OLのコスプレをした、OLの仮面を被った自分としてではなく、そのままの私として仕事をしている感覚になれるのだ。
服装ひとつだけでも、こんなに変わるものなのかと驚いた。

日本の会社は、時代と共に変わってきているように思う。
会社と社員の距離だけではなく、同じ理念を持った会社同士の距離も縮めているようにすら思う。
それに対して、政治はどうか。
私は今まで、Tシャツを着ている政治家を見たことがない。
スニーカーを履いている政治家を見たことがない。
総理大臣がリラックスしている姿を見たことがない。
政治と会社は違うよと言われてしまえばそこまでなのだが、政治家はいつまでスーツを着続けるんだろうという違和感は残る。
この国で同じように働く大人でありながら、世界がどんなに変わっていこうと、頑なに高価なスーツを着続ける日本の政治家と、会社の理念改革に拍手しスーツを脱ぎすてたサラリーマンの心の距離は、どこまで広がっていくんだろう。

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会社員が会社を好きになる瞬間って、会社が社員に歩み寄ってくれた時だと思う。
社長や役員が、社員にフォーカスを当てていることに気がついた時だと思う。
同じように私服で出勤し、社員同士が自然にそうするように、自分のプライベートのことも(無理に話す必要は決してないけど)話したりして、良好な関係を築きたいと社員に歩み寄ること。そういうところを、社員はちゃんと見ているし、人として好きになった時に、社長として役員として好きになるものだと思う。
国も同じではないだろうか。
国民は国民、政治家は政治家、と別の感覚で生きていたら、ずっとお互いに歩み寄れない。
分かり合えないこともあるかもしれないけど、何より大切なのは歩み寄る努力をすることなのではないだろうか。どうか政治が、この国で働く人たちと一緒に、変化していきますように。アップデートし続けていきますように。
政治の世界でこれから働いていこうと決意する新参者に対して、高価なスーツを着なくてもいいんだと、オープンでいてくれる政治でありますように。