就活生は平成23年から増加傾向にあり、現在では40万を超える人々が、様々な感情を抱きながら就活を行っている。
私も4年制の大学を卒業するにあたり、2019年の7月から2021年6月まで初めての就職活動を行った。その際感じた不満をここにぶつけてみたい思う。

私が不満に感じたこと、それは就活をする際の服装・髪色についてだ。
私の場合、本格的に就活を始める前に、インターンに行きながら就活セミナー参加し、就活のマナーや進め方について学んだ。2019年の7月~9月くらいにかけてだろうか。その際服装の指導がある。

日本人はどの国の人々より「気にしい」だと思う。
つまり、自分だけ異質な存在とみなされることを恐れる、得にならないという考え方が強いと感じるということだ。

時代は「ジェンダーフリー」。Xジェンダーの私にとっては生きやすくなってきたけど

しかし、時代は進みつつある。「ジェンダーレス」「ジェンダーフリー」という風潮が世界的に盛んになりだし、日本でも、化粧をしたり、スカートを取り入れたファッションを身にまとう男性が増えてきているし、メンズの服を着る女性も多くなった。
まさに性別不問、男性・女性という概念にとらわれるのではなく、自分という性を大切にする。世の中は少しずつそのような流れになりつつあると思う。
私もXジェンダーで、体は女性だが心には女性・男性のアイデンティティと感性がある。その為、ここ近年の世の中の風潮はとても嬉しかった。

だが、就活の世界はあまり変わっていなかった。
就活をする際の服装が書かれた冊子には、見本となる典型的な服装、髪型・髪色を指導するイラストが描かれていた。男性はスーツのズボン・革靴、女性はスカート・パンプス。髪色はどちらも真っ黒だった。
私はこの時点で不満だった。補足としてズボンやスニーカーでも可、みたいことも書いてあったが、見本となる形がこの2パターンしか書かれていないと、多様性が奪われてしまうのでは?そう思ったからだ。
何年も前から就活をする際の服装や髪形の多様性については議論されているし、髪色に関しては、地毛が明るく染めたように見えてしまう人達のために理解を求める声が強まりつつある中で、それがあまり反映されていなかったのがすごく残念に思った。

スーツに革靴のアドバイザーは言う「スニーカーでも、ズボンでもいい」

「個々の冊子に書かれてある服装や髪色は例で、面接はパンプスや革靴でも、会社説明会などではスニーカーを履く子が増えてきているし、性別に関係なくズボンを履いて面接に行くケースも多くなっているよ」と就活アドバイザーは説明していたが、その人の服装を見ると、教科書のイラスト通りだった。何人ものアドバイザーに会ったが全員だった。
男性はスーツのズボン・革靴、女性はスカート・パンプス、そして真っ黒な髪。
多様性を提示するべき指導者が、一番「気にしい」だった。何かに恐れた姿。
見本となるべき人間が全員そうなのであれば、それを教えられた我々は自然とその姿に吸い寄せられていく。「気にしい」になっていく。
就活セミナーが終了してから、地毛が元々明るいため黒に染める人を何人も見たし、眼鏡だったのを無理やりコンタクトに変えた人もいた。ズボンかスカートどちらにするか不安そうに相談しあう姿もいくつもあった。
せっかく進みつつある時代の流れが逆戻りしてしまったようで、居心地が悪かった。

私が選んだのはズボンと茶色のコート。みんな聞いて、それでも大丈夫だったよ

本格的に就活を開始したのは10月から。
私はどんな服装で活動したかというと、寒さを感じるのが嫌だったため、ズボンを選んだ。靴は靴擦れしにくい体質のためパンプスで。また、この時期から肌寒くなるため、スーツの上に何か羽織る必要がある。私のはお気に入りのこげ茶のロングコートを選んだが、本来女性の場合ベターなのはベージュのトレンチコートだ。
これに関しては何故、誰が言い出したのか全くわからないが、ほぼ全員が同じ色、形のトレンチコートを着ていた。寒いのにスカートで、靴擦れしやすい体質なのに無理にパンプスを履いて血が出てしまった子もいた。

私は、全部に嫌気がさした。
その後、私は周りの子とは違う服装で面接までいき、就活を無事に終えることができたのは6月だった。いくつも内定を頂けて、気持ちが晴れたのを覚えている。救われた気持ちになった。
今から就活を始める方は、どうか「気にしい」にならないで欲しい。大丈夫、大丈夫だから。