あの経験はつらい。
結構な割合の人が経験したことがあるだろう。そして、その中でも複数回経験した人も多いのではないでしょうか。
友達も家族もいない、全員知らないコミュニティに放り出される経験。
建物のどこに自分の教室があるのか、職員室や保健室はどこかもわからないし、誰がリーダー格で、誰がムードメーカーで、誰と誰が親友なのかもわからない。
下駄箱がどこで、どこで何を履き替えるべきなのかもわからない。
物理的にも、人間関係でも自分を完全に見失う。
そんな中で、出る杭は打たれるという日本独特の環境下で、クラスやご近所さんになじんでいかなければならない。
かといって、足が速いとか絵がうまいとかそういう光るものを持っていないと、なじむことができない。
すごく繊細でストレスのかかる作業ですよね、転校をするということは。
だから私は、「行政による転校生へのケア」を求めます。
理由につきましては、私の経験をお伝えしようと思います。

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私は小学5年生の時、近畿の少し田舎の地域から関東の大都会へ引っ越しをし、転校生という時間を過ごすことになりました。
子供って、脆い人がまだまだ多いと思います。
そんな中で、これまで生まれた時から一緒に育てられ、一緒の保育園や幼稚園、習い事、季節のイベントをたくさん楽しんで、思い出や写真や共通の前提がある人たちの仲間につめこんで遊ばせたり、勉強させたり、運動会やらに参加させるって酷だと思いませんか。
さらに家に帰ってくると、必ず親から「今日はどうだった?友達できそう?」とほとんどの確率で聞かれます。
答えはほとんど一つ。「今日は最低限しか話さなかった。友達はほとんどグループができてるから作るのは難しそう」。以上。
違う答えをできるようになるのは数週間は先だと思います。
それまでの数週間、そしてその後のスクールライフを無傷で過ごせるのは、よっぽど恵まれている人なのではないかな、と思います。

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仲良い友達を見つけたり、近所のママ友に相談したりしたらいいんじゃないかって?
ハイわかりました、検討してみましょうか。
でも、知り合いが0人で、誰を信用できるかわからず慎重にならなくちゃいけないうえ、失敗は許されないから相談する相手を間違えると最悪です。
だから、検討した結果、独りで抱え込むしかないのです。
もし信頼できる人がいても、最近はLINEやSNSで何を言われているかわからないからね。
以前の雑談タイムは、子供たちなら休み時間、親なら子供の送り迎え前後とかだったとおもうけど、スマホで朝から深夜まで会話をできるようになったから、自分が何を言われているか察することもできない。
表面ではニコニコして、裏では事実無根の情報がまん延するという惨劇になりかねない。
「記憶にございません」という、あなたたちの常套句の正しい使い方って、こういう時なんですよ。
見知らぬ土地で頼れる人がいなくてどうしたらいいかわからない中で、人選と言葉選びの間違いの際に使うことができる言葉です。
あ。そうそう、「記憶にございません」の細かい使い方まで制定してほしいけど、「記憶にございません法」は次の機会にさせていただきます。

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昨今、保険適用範囲を広げて少子高齢化に頑張っているように見受けられますが、産ませて終わりですか?
まさか、違いますよね?
子供たちのケアもしてくれますよね?
じゃなきゃ、転校した子たちは自分と同じ思いをさせたくないからって、出産に躊躇する理由の一つになりますよ?
あなたたちが欲しがっている若手やら働き盛り世代やら現役世代やらが、本当にいなくなります。
あなたたちを養うことができる人が減るというのは、転校して孤独になってひねくれてやる気がなくなった私ですらわかりますよ。
だから、子供のケアもしてくれると思っていいですよね?

転校生経験者として、「転校生へのケア」をご提案しますね。
せっかくマイノリティなので、勇気を出してお伝えしております。
ご検討いただけますと幸いです。
あと、卒業アルバムが全員にとってすばらしい思い出の賜物ではないので、卒業文集の作文や写真撮影への拒否権の付与も合わせてご検討くださいませ。
何卒よろしくお願い申し上げます。