昨年の衆議院選挙。途中で開票速報を見るのをやめた。
投票率は今までより遥かに上がるだろうし、なんなら政権交代だってあり得るんじゃないか。なんて勝手に期待していた。
10月31日、街を歩くと、若者がハロウィンの仮装をして楽しそうに歩いていた。
カフェに入ってみると、そこにも多くの若者がいた。
誰一人、選挙の話をしている人はいなかった。
わたしは何かが変わるかもしれない予感に、こんなにもワクワクして落ち着かないのに、みんなはいつも通りのハロウィンを過ごしているように見えた。
その頃、わたしは仕事をしていなかったし、外に出かけることもほとんどなかったので、世間は意外と選挙のことなんか気にしていないんじゃないか、なんて思いもしなかったのだ。
怖くなって家に帰って開票速報を見た。
投票率の低さに、わたしの期待は打ち砕かれた。
ああ、こんな気持ちでいたのは自分だけなのかもしれないな、と思った。

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コロナ禍になって、より身近に政治の影響を感じるようになった。
わたしのアンテナでもキャッチする出来事が増えた結果、選挙までの約1年、毎日絶望することばかりが起きているように感じた。
自分たちや関連する一部の利益のためだけじゃなく、国民のために政治が動く他の国が羨ましくてたまらなかった。

十分な支援もなく閉店を余儀なくされた飲食店、コロナ予備費の使途不明の11兆円、物価の上昇と上がらない賃金、基準額が引き下げられていく生活保護費、ご飯を3食食べる余裕がない子どもたちとボランティアで食事を振る舞う人たち、支援を受けられずに一人で出産して逮捕された女性、不起訴になった入管での死亡事件、何度も通報があったのに虐待の末に亡くなってしまった子。

テレビを付ければ、怒りが湧いてしょうがないのに、知らないでいることの方が辛いだろうとも思っていた。
変えるチャンスがあるのだから、たくさん知って、たくさんおかしいと感じて、それをエネルギーにしよう。
でも変わらないのなら、毎日感じる絶望はどうすれば良いのだろう。
積極的にニュースや国会中継を見るのをやめてしまった。

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現実から離れて映画や漫画ばかりを見ていたが、最近は邦画界の醜悪な事件が次々と明らかになって、この国にはわたしが安心して享受できるものは何もないのだな、と大げさに思ったりもした。

そしてもうすぐ、参議院選挙が始まる。
もしかして、何か変わるだろうか。
いっそのこと海外に移住でもしてしまおうか、なんて考えていたわたしだが、大切な人たちが暮らしているこの国で、淡い期待を捨てられずにいる。

具体的な問題の解決を期待するとその分絶望も大きくなるので、最近は漠然とこう思っている。

誠実であってほしい。
嘘をついたりごまかしたり、隠したりせず、ただ誠実でいてくれれば良い。
これはそんなに難しいことだろうか。
自分たちの主張があって大義があって、それが正しいと信じているのなら、隠す必要なんてないはずだ。
政治家が発する言葉や行動を見ることでしか、わたしたちは判断できないのだ。
どうか隠された裏側を暴こうとさせないでほしい。
そうすることでしか真実を知ることができないなんて、おかしいだろう。
誠実に伝えられた情報を元に、周りの大切な人たちと話し合って選択したい。

もしそれが叶って、判断材料が透明なものになれば、国民の意思はもっと明確に反映されると思う。

自分の将来やこの国に対して、希望をもちたい。
この状況が、どうか少しでも変わることを願っている。