忘れたくない。
わたしの最愛のインコの、あたたかな、ふさふさを。

我が家に初めてやってきた小さな家族。
名前を、ららちゃんと言う。
緑色のコザクラインコ。

◎          ◎

コザクラインコは、雛の時と大人になるとで、おでこの色が変化する。
一般的には鮮やかな赤に。オレンジや黄色になる子もいる。
だから、コザクラインコ。
小さな桜のような可愛らしい小さな家族。
うちのららちゃんのおでこはオレンジ色である。

わたしはペットロスのつらさをまだ知らない。
うちのららちゃんはまだまだとっても元気で、早く鳥籠から出してくれと毎日元気なダンスでアピールをするし、そこらにうっかり放置してしまった本やノートをぶちぶち噛みちぎってボロボロにしてしまうし、人間家族のコーヒーもポテトチップスも自分も分けてもらえるものと思っているし、わたしたちが気に入らないことをしたら血が出るまで指を噛んでくる。
もうすぐ9歳になる。
コザクラインコの平均寿命は20年と聞いた。

動物の寿命は20年、長いと思われるだろうか。
小さな手のひらサイズの動物は、とってもお別れが早そうなイメージはわたしにもある。長い方なのだと思う。
初めましてで中学生だったわたしが、40近いオバサンになる。
でも、ららちゃんの家族として、20年と定められた時間はとても短い。そう思う。

◎          ◎

ずっとずっと一緒にいたい。人間だって同じだ。
地震などの自然災害が多い日本。
新型のウイルスが猛威を振るう現在。
世界のどこかで国同士の争いが発生していると、毎日のように報道されている今。

異常に心配症で怖がりなわたしは、たくさんの人との別れを連想してしまう。
いまだになれない。
1人でパニックになって泣く日がある。
わたしたち人間でも、おじいちゃんおばあちゃんになれる保証がない。
先の見えない死の心配をしてしまう。できてしまう。
ららちゃんの命はそれよりもずっと、もっと、短いということなのだ。

わたしはその時、どうしたら良いのだろう。

毎日手のひらに乗ってきてくれる。
肩に乗って昼寝をしていることもある。
わたしの涙をぺろぺろ舐めてくれる。
寒いと服の中に入ってきたがる。
とっても甘えん坊で人懐っこい。末っ子力が半端ない。

でも多分、とても賢い。
話しかけるととてもいいタイミングで、ピー!と返事をしてくれる。
離れた部屋で、姿の見えないところで何かをしていると、悲しい時の声を出す。声を掛けるとピタッとそれも止む。
音楽が好きで、何か流れると気分のいい時はリズムに合わせて歌っている。
ひまわりの種が大好物で、あげた分は一気に全て平らげてしまう。

◎          ◎

可愛くないわけがなかろう。
小さな家族が可愛くない人がいるわけないだろう。愛おしくてたまらないだろう。

人間と違うのは、あのちょっと独特なにおいと、ふさふさの体。
違うものを食べて命を繋いでいるのだなあと感じる。
鼓動はわたしのより、ずっとはやい。
あんなに綺麗な色のふさふさの毛は、わたしにはどうしたって生やすことができない。
ららちゃんはそれで、空を飛ぶことができるのだ。
我がペットながらびっくりしてしまう。

まだまだ元気でいてくれるだろうけれど、その時間は無限ではない愛しい子へ。
わたしは何をしてあげたいだろう。
何かの時には、わたしはこの子との何を覚えていてあげたいだろう。
今ぱっと思いついたのは、そのふさふさした柔らかくあたたかい手触りだった。