たった一人の人との愛を誓い、家族になることは、これ以上ないくらい尊くて素敵な行いだと思う。
その一方で、世の中の夫婦に「今のパートナー以外に、忘れられない人はいる?」と質問したら、どのくらいの人がYESと答えるだろう。

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結婚が決まったことをインスタグラムで幸せいっぱいに報告した時、一番に連絡をくれたのは10年前、高校2年の頃に別れた元彼だった。
別れて以来、まともに連絡を取ったことがなかったから、本当にびっくりしたのと同時に
「嫌われていたわけじゃなかったんだ」と、安堵する気持ちがあった。

卒業後に進学した大学のこと、今の仕事のこと、今の彼と付き合って8年ほどになること、結婚後は彼の仕事の都合でニューヨークへ行くこと、そして元彼にも今は結婚を考えている彼女がいること。
10年間あったことを話すだけで、DMのやり取りが止まらなかった。
「ニューヨーク行っちゃう前に、一回会おうよ」
痺れを切らした彼から唐突の誘いだった。
当時まだ高校生だった私たちは、キスすらできないウブな関係だったこと、10年という月日がきっともう「時効」だろうと思わせたことから、私はその誘いに乗ることにした。

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久しぶりに会った彼は、髪型こそ変わっていたけど声も顔も、ほとんど変わらないままだった。
我ながらよく覚えているもんだなと感心する。
お酒の力もあってか、会うのが10年ぶりだなんて信じられないくらい話が弾んだ。

彼は相変わらず気の回る人だった。
しれっと手頃で雰囲気の良いお店を予約して、私がお酒を頼む度に、そっとお水を頼んで添えたり、ひと段落してあたりを見渡す私に、お手洗いの場所を指差したり。
ああ、こういうところが好きだったんだっけ。
心なしか、私を見る彼の目が優しい気がする。
私の頬に触れる指が、緊張を目に映すように震えている。

10年前、最後に二人で会ったのはコスモスが綺麗に咲き乱れる河原のベンチで、私は涙を流して彼はずっと下を向いていた。
当時はよくわかっていないまま泣いてばかりだったけれど、卒業後、警察学校に進むことを決めていた彼が、会うことはおろか、連絡すらマトモに取れない未来の二人を案じて出した結論だったことは、今となっては容易に想像できた。
お揃いでつけていたストラップは、いっそ二人で川に投げようかと提案したけど、持っててほしいな、と彼は相変わらず下を向いて呟いたっけ。

生まれ変わるなら、もう今の仕事は目指さないなあ、なんてボヤいたあとで、「ごめん、昔話しすぎたね」と彼は少し笑って、一緒に店を後にした。

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ずっと忘れられなかった人と10年ぶりに再会したら、きっと多少はガッカリして、スッキリするもんだろうと思ってた。
けれど会ってみたら、どれだけ時が経っても私たちは思っているより、ずっとお互いを気にしていて、そしていつまでもプラトニックだった。

「今のパートナー以外に、忘れられない人はいる?」
私の場合はきっとずっと、しばらくYESだと思う。