わたしのやる気がでない時。それは、まさに今だ。なぜなら、未知なる仕事をしなければならないから。
先日、職場で行うイベントの案を提出した。今までにない内容だが、どうせペーペーの考えたことなんぞボツだろう。そう思って軽い気持ちで書いた。
ところが、予想に反して、それが採用された。そして話し合いの末、
「これはあなたが書いてきたのだから、企画しなさいよ」
と、企画することになった。
これは、自分の思いを形にできるまたとないチャンス。普通はワクワクしそうなものだが、わたしにとってはそうでもない。未だかつてないほど、苦手なことが山積みの状況なのだ。

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そもそも、未知のことに取り組むのが大の苦手だ。それだけで胸がザワザワしてしまう。
誰もやったことのない内容を、ゼロから考えなければならない。わたしが青写真を示さなければ、誰も何もできない。そんなふうに、メンバーの中心になって何かをした経験はない。しかも、イベントの企画そのものも初めてだ。荷が重い。
そうなると、自ずと必要になるのが、先輩たちとのコミュニケーション。企画立案について右も左もわからないので、尋ねて回るしかない。
ただ、そこが厄介なのだ。日常の業務と同時に進めていくので、時間は限られている。いかに相手に手間を取らせず、必要なやり取りをするか。考え始めると、気が重い。ただでさえ人と話すことが苦手なわたしには、とても高度な芸当のように感じる。それだけでもう、苦しくなりそうだ。
本当にこんな気持ちで、楽しいイベントなんてできるのか。次から次へと、不安が襲ってくる。やる気は、でない。

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こんな時、「やるべきことを細分化して取り組む」というのが、模範解答だと思う。
しかし、わたしは、寝る。
不安で、やる気がでない時は、寝るに限る。名づけて、「お昼寝大作戦」。
やるべきことがあっても、休みの日には全部投げ捨てる。そして、昼間から大の字になって、寝る。
何もできていないが、まぁいいか、とゴロゴロする。
起きたらアイスを食べようか、それともチョコにしておこうか。いや待て、あのテレビの録画を観ていなかったじゃないか。そんなことで頭の中が埋め尽くされる。要は、現実から逃げたいのだ。
お昼寝から目が覚めても、何をするわけでもない。ぼーっとしているか、その時に思い立ったことをする。そして、ご飯を食べて、また寝る。

手をつけなければ、何も解決しない。それは、よくわかっているつもりだ。
しかし、なぜ寝るのかと言われれば、エネルギーがチャージされるような気がするから。
人は、何をしていてもお腹がすく。それと同じように、何をするにしてもエネルギーを使うのだと思う。得意なことをする時が10だとしたら、苦手なことをする時に振り絞るそれは、100。わたしの中ではそんなイメージだ。

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今回も例に漏れず、作戦を決行した。
さすがに2~3時間も眠ると、焦る気持ちも出てくる。よし、やろう。わたしは、イベントの中身について、アイデアを練ることにした。
しかし、いくら考えても、何も浮かばない。何せ、テーマが難しいのだ。室内でできる簡単な運動で、誰でも参加できて、楽しめるもの……何それ。自分で提案しておいておかしな話だが、お手上げだ。
これはまずい。また、やる気がでなくなる。その前に何とかしないと。
そう思ったわたしは、思いきって、その場にいた母に知恵を借りた。
しばらくして、何とか決めることができた。試しに、その内容をインターネットで検索してみた。すると、必要な道具、楽しむためのアレンジなど、実現させるための情報がたくさんあるではないか。
これはいける。俄然やる気がでたわたしは、その勢いのままタイムスケジュールを完成させた。やっと企画書が書ける。えらいぞ、わたし。

世の中には「やる気は、動いているうちに出てくるもの」という意見もある。
しかし、動き出すのにも、とてつもない量のエネルギーが必要だ。未知なるものに向かうならなおさらだろう。疲れていたら、そのエネルギーすら出せないかもしれない。
そんな時には、誰に何を言われようと、「お昼寝大作戦」。
時間がかかって少し遠回りな気もするが、体も心もすっきりすれば、やる気がでてくるかもしれない。
そこのあなたも、お試しあれ。