やる気というのは目に見えないから、自分のやる気が他の人と比べてどうなのかは分からない。だが、なんとなく、人と比べてムラが少ないとは思う。
やる気に満ちあふれているわけではないが、やる気がないわけでもない。そんな感じだ。

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私がここ最近で一番やる気が出なかった時がある。他の人が聞いたら、くだらないと思うかもしれない。

私はマッチングアプリを使っているのだが、先日そこでやりとりをしている人と会うことになった。
何週間かアプリでやりとりをしてくれて、好印象な人だった。基本的に、LINEにすぐ移行したがる人が多いので、そうでない人は信用できる。これは私の独断と偏見に基づくデータである。
返事もものすごくマメではないにしろ、毎日くれるし、常識もありそうな感じだった。

ただ一つ懸念していたのは、アプリの写真が1枚しかなく、それが少し長髪だったことくらいだ。私はあまり長髪な人が好きではない。なぜいいねしたのか、今になってみれば自分でも分からない。
やりとりをしている時も、急に誘われることもあり、そこそこ好意は抱いてくれているのかな、と感じていた。

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楽しくやりとりを続け、ついに約束当日を迎えた。
相手の予定の関係で、食事ではなくお茶をすることになっていた。
実際に会ってみて、良いな、と思える所がいくつもあり、また会えたら良いな、と思った。
解散した後、私はいつも通り、相手にお礼の連絡を入れた。これは、誰に会ってもしていることである。
返事が早く来ないかな、と待ちわびていた私をよそに、一向に来る気配がない。おかしい。
なぜなら彼は、解散してすぐに駅の改札を通り、電車に乗ったからだ。電車に乗ってスマホを見ない人なんてほとんどいない。
マメではないとはいえ、遅くても大体数時間とかでこれまでは返事が来ていた。夜6時前に解散したその日、彼は7時頃に夕食をとると言っていた。その時間を過ぎても来ない。
金曜日だし、疲れて寝てしまったのかな、とも思ったりしたが、24時を過ぎても来ない。段々雲行きが怪しくなる。もうその時点で、いくら待っても来ないだろうと思った。
次も会いたいと思ったら、どんなに連絡が遅い人でもその時くらいは早めに返事をするものだと思うからだ。

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幸か不幸か、私は約束の翌日、仕事があった。翌日起きて、相変わらず来ない返事に、仕事なんてしている場合じゃないよ、そう思った。
待てど暮らせど返事は来ない。さすがにそこまで返事が空くことはこれまでなかった。返事がないのが返事。そうわかってはいても、仕事に行く気など起きるはずがなかった。
仕事に行きたくないな、と思うことが普段ほとんどない私にとっては珍しいことだった。
これまでアプリの人と何人も会ってきて、連絡が来なくなったり、また会いたいなと思った人ともう会えないということは何度かあった。だが、仕事に行きたくない、そう思うのは今回が初めてだった。

その時に初めて、自分が相手のことをそれだけ良いな、と思っていたと気づいた。ただ、やる気が出なくても、仕事を休むわけにはいかず、大人しく出勤した。
結果としては、それで良かったのだ。仕事中はそれなりに忙しくて、余計なことを考える暇もなく時間が過ぎた。これが休みだったら、そうはいかなかったはずだ。
アプリを開いては、ああ返事が来ていない、と悲壮感にさいなまれながら、何度もそんなことを繰り返す羽目になっていただろう。そんな悲しい休日はあってはならない。

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あれから、勿論連絡などとっていないが、これもまた縁なのだと思う。お礼の連絡をしたのに、返事すらしてこないなんて常識のない人であるし、それが早い段階でわかって良かったのだ。
また、アプリの人と一度会った後の展開というのは様々あるが、その中にまた一つ、新たなケースがあると教えてくれた。

人間、やる気が出ない日もある。それでも、そのやる気が出ない原因が、何かしらの学びや気づきを与えてもくれるのである。