自分の身体に対して、物心つく前に違和感を覚えた。
スカートを着させられるのは心底嫌だったし、それは記憶に残っていない幼少のときから嫌がっていたと母も言っていた。
スカートを履くことは「自分は女性」と強制されるような、私にとっては圧力だった。成長して自分の身体が女性になっていくにつれ、心はそれについていけなかった。女でもないような、男でもないような何とも言えない性の感覚に混乱した。

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高校に入ってからその意識は加速した。引き金はやっぱりスカートで、高校の制服はこれまでの着方と違い、ショーツの上に黒パンを履くだけと違和感があった。なんで男子も女子も多感な時期なのに、性的なものをさらさなければならないんだろう。今まで以上に短いスカート、ワイシャツから透けたキャミソールやブラジャー。それが普通とされる小さな社会に「なんで？」でいっぱいだった。

皆がお年頃な高校生活に、疎いながらも自分も女の子になろうと振舞った。初めて買った化粧品はグロス。それをつけるだけでも女子っぽくなった。出かけるときはストレートアイロンを髪にあてたし、スカートもワイシャツの袖も何度も折って皆と同じにしていた。
でもマスカラをして面を被り、助っ人として参加していた剣道部の練習時にふと「私変だな」と感じた。なんでマスカラを塗ってまで剣道をしなければならないんだろう。剣道に失礼だし、これまでの私じゃないなと思った。

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自分の身体との付き合い方。前より肯定的になれたけど実はまだ目を背けているところもある。
化粧もおしゃれも大好きで、バブルを懐かしむ実に女性らしい母と叔母、義母からの言葉は受け流せるようになった。母と叔母は私によく「化粧をしろ」「もっと可愛らしい服を着なさい」と言った。私を自分好みにしたかったのだろう。でも私はそうじゃない。「なんか他の子と違うんだよな～」ともらされる言葉に傷つきながらも、「ふ～ん」とやり過ごした。

実家を出て共依存していた母から巣立つと私のスタイルは確立された。私が本当にしたかった恰好はナチュラルカントリーで反都会的だった。極力化粧もしない、全体的にナチュラルなスタイルがしたかった。けれど髪型はかっこよくしたいとここで男性性がでる。何度家族に「男の子みたい」と言われても、実家を出てからはショートヘアを貫いている。ショートは私にとって自由の象徴だ。

結婚をしてからも叔母に「そんなに（身なりに）手を抜いていると旦那さんに飽きられちゃうよ」とか、仲良くなった義母に「もっと明るい服を着なくちゃ～」と言われても、心の中で「うるせぇ」と呟きながら、これが私のスタイルだと堂々としている。自分の好きなものを身に着け始めてから、大げさだけれど生きるのが楽しくなり精神的にも元気になった。

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でもまだセックスは苦手だ。私が忙しさのあまり身体を壊し、回復して社会復帰した現在までの約2年間、セックスレスだ。それ以前は回数こそ少なかったが定期的にしていた。彼は性欲のある方だけれど私が「セックスが好きじゃない」と打ち明けると悲しみながらも配慮してくれ、私はそこに甘んじてしまった。

セックスをすることで自分が女性だと感じ、嫌悪する。だからその行為が嫌いなのに、彼は自分にテクニックがなかったり色気がないからだと解釈してしまい、彼のプライドを傷つけてしまった。
彼も傷つき私も傷つき、何もしないでもう2年。自分の性欲は自分で処理し、精神的に繋がることでむしろセックスはいいかなとお互いがなってしまった。

セックスが「慣れ」なのは重々承知だ。次に向かうは子作り。私たちにはまた慣らすチャンスが待っている。子ができてもできなくても、今年こそはと義務に思わなくてもセックスを楽しめるようになりたい。
この調子だと一生かけて私は自分の性を受け入れるんだろう。ゆれる胸を邪魔だと思いながら、今日もノンワイヤーのブラをつけて暑い夏を過ごしている。