今までの人生、ふったこともふられたこともある。
主人は初めて付き合った人で、付き合うにいたるまでに彼の告白を2回断った。中学生のときに出会い、出会ったころから「結婚するならこの人だな」と感じていたが、それゆえ付き合うなら結婚の覚悟ができたときだと思っていたため、毎回断っていた。
相手に誠実ではあるが、甘んじていた。結婚相手と腹をくくるまで他の人と付き合ってみたいとも思っていたからだ。
彼にとってその失恋は今では笑い話になり、馴れ初め話をする度に意気揚々と話すが、その横で私は傷つけてしまったことに今更傷ついている。人をふるってこんなに傷つけるのかと、話されるたびに痛感している。
けれど私は後悔していない。主人とは親友のままでいたくて、あえて好きな人の話をしたりと、告白以外の場面で傷つけてしまったこともあったけど、私も私で好きな人がいた。
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シャイで一途な私は、初恋の人へ告白するのに6〜7年かかった。彼は中学に入学したときに同じクラスになった子で、まだ小学生の雰囲気が抜けないクラスメイトの中で、とても大人びたかっこいい子だった。
スポーツもでき頭も賢く、まさに文武両道。いろんな先生に目をかけられ、意識する人は多かった。私もその中の1人だった。
彼は憧れだった。好きというより目の保養で、自分の中でアイドルだった。話したことはほとんどなく、妄想ばかりで彼の中身をほとんど知らない。
彼を超える人は後にも先にも現れず、主人と付き合うまで、彼は私の妄想相手だった。
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20歳になって成人式で彼と再会した。
久しぶりに会った彼の顔はあの頃と変わっていなかったけれど、真っ白で活気がなく弱弱しかった。頭のいい人だったから勉強で忙しかったのだろう。ますます私の価値観と合わないなと実感した。
それでも記念に告白してみようと思った。彼への思いを断ち切るためだ。彼を好きすぎるあまり付き合いたくないと思いながら、でもドキドキしながらラインでただ好きだと思いを伝えた。
彼は優しかった。私を傷つけずにありがとうと言い、気持ちに応えらえないと断ってくれた。
多分今までたくさんの人に告白されてきただろうに、慣れとは違った、うまく言えない優しさに満ちた返信だった。
良い人を好きになったと思えた。何も言えなかった7年間が報われ、気持ちがすっきりした。これで思い残すことなく主人と付き合える。
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主人と付き合ってからも、たまに彼を思い出した。
もし未来でまた再会して万一甘い言葉をささやかれたら、私はどうなるのだろう。主人に黙って秘密ごとをつくるのだろうか。
付き合いたての頃こそ無駄に思いをめぐらせたけど、主人を愛するたびにそれはnoだと思えてきて、今は彼でもどんなにかっこいい人でもnoだときっぱり言える。
人をふって傷ついた。人にふられてすっきりした。人をふって今も傷ついているけれどそれがあって今がある。いろんな人と出会い、思い、思われ、私がいる。恋という存在は私にとって苦いけれど、自分ひとりの人生じゃないんだと恋と愛が教えてくれた。