「顔が大きすぎるから、この教室に入れないんだよ」
小学3年生の頃、太って顔がパンパンだった私は、このような悪口を言われた。
幼少期からその子にはずっといじめられてきたから、私の身体がどうとかいうより、ただ私をいじりたかっただけなのかもしれないが。

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その後、ティーン向けのファッション雑誌を買うようになってからは、背が伸びたこともあって少し痩せたのだけど、今度はホクロが気になり始めた。
9割がた家の中にいるし、外出時は日焼け止めや日傘も使っているのに、何年経っても増え続けるホクロとは、まだ完全には仲良くなれていない。
だけど、あれから10年ほど経った今、少し状況が良くなったのは、自分のなかである程度コントロールがきくようになったからに違いない。

感情が揺れて赤く染まりそうなら、一度深呼吸をしてみる。
なんとなくモチベーションが上がらないなら、映画を1本観る。久しぶりに、いつも開けない食器棚から茶道の道具を取り出し、お薄を点ててみる等……。
他人の目にうつる自分が嫌に感じたとき、私を癒す方法なんて、いくらでもある。
そう思いながら色々試してみるのは、意外と楽しい。

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唐突だが、私にはイチオシの映画がある。
「アイ・フィール・プリティ!人生最高のハプニング」という作品だ。

主人公レネーは、自分の見た目をものすごく気にする女性。
動画を見ながらおしゃれなヘアスタイルを真似してみたり、鏡の前で自分の姿を見て幻滅する姿は、自分の普段の行動を外野から見ているようでつい応援したくなる。
魔法のように見た目が一瞬でキレイになるのではなく、「キレイになれた」というある意味での勘違いから、彼女は幸せを見つけ出していくのだが、その途中の道は決して甘いもんじゃない。
今まで一緒にいた親友と距離をとることになり、不満や不安が溜まっていく。
素敵な彼氏ができたのに、他の男とキスをしそうになる。
自分でも自分のことがだんだんわからなくなっていく。

ではレネーが自分を取り戻した(あるいは、もっと自分らしい自分にアップデートできた)理由は何だろう。
自分を信じたり、信じられる気分になったからなんじゃないだろうか。
自分で自分をご機嫌にする方法を、彼女は見つけられたんだと思う。
ただ彼氏がいるだけじゃない、ただ人間関係や仕事が上手くいったり、身体が素敵なだけじゃない。
だからレネーは幸せになったんだろうな。
私はまだ自分から他人の輪に飛び込む勇気がないけれど、どうすれば自分は幸せか、見た目なんかに惑わされず、考えられたら素敵なんだと思える。

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今より痩せようが太ろうが、自分の身体に今と違う“何か”というのはいつも存在するだろう。
明日にはホクロがまた1つ増えているかもしれないし、治りかけたニキビを搔いてしまって巨大化させて激しく後悔するかもしれない。
それでも、少し変わったくらいで別に死ぬわけじゃない。
そんな簡単に、人生を終えられるほど私は何も成し遂げていないし。
それに。

私にはレネーという最高のお手本がいる。
お手本というよりは、時に反面教師、時に一緒に泣ける友達のようなキャラクターかな。

自分を落ち込ませるのは勝手。
だけど、たまたま周りに誰もいないことだってあるんだし、そんなに自分を責めないで。
他人の言うことよりも、自分のなかにある声を拾ってあげる方がずっと大変だけど、とっても大事なんだから。

見た目への批判と戦った、あの頃の私へ。
今、大好きな自分を迎える準備をする私より。