地元にいたころは毎日を乗り切るのが精一杯で、みんなみたいな青春をしている余裕がなかった。

東京の大学へ進学が決まったとき、上京すればきっと、いい出会いがあるかもしれないと期待していた。
けれど、残念ながら、色んな意味で変わった男性たちしか寄って来なかった。
いいなと思った人でも、仲良くなるにつれて、「あ、ヤバい人だ!」と気づいてしまう。
交際経験はあるけれど、なかなか良縁に恵まれなかった。

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前職のときに、職場の後輩と10ヵ月付き合ったことがあった。
少しふくよかな体型で、穏やかな性格。
他の社員よりも熱心に、かつテキパキと仕事をこなす。
最初は「真面目に働いてるんだな」くらいにしか思っていなかった。
それから少しして、よく話しかけられるようになった。

私を慕ってくれて忠犬のようなので、彼のことを「ポチ」と呼んでいた。
そう呼ぶ度に、彼は嬉しそうにしていた。
何度か食事に行くようになり、先輩と後輩から友人の関係になっていった。
そして、休日にドライブへ行ったときのこと。
帰りの車の中で、ポチから告白された。

正直、私の理想の男性像にはほとんど当てはまっていなかった。
恋愛特有のドキドキ感もなかった。
でも、一緒に過ごしていてとても楽しかった。
「ポチなら、恋人として好きになれるかもしれない」
私はその場で返事をして、付き合うことにした。

最初の数ヵ月はよく連絡を取ったり、一緒に色んな場所へ出かけたりしていた。
それが、だんだん私が連絡しても返信が全然こないことが続き、気づくともう4ヵ月ほど会っていなかった。

友人や会社の人とはよく遊んでいたようだったけれど、私とはまったくない。
おそらく、ポチの中で私の優先順位が下がったのだろう。
色んな価値観の人がいるからと、私も好きなことをして自分の時間を過ごしていた。

ある日、久しぶりに会うことになった。
日にちと場所は決まっていたものの、時間はまだだったので、私は「何時がいいかな?」と連絡した。
会う2日前になっても返信がなかったので、「どうしたのかな?」と思っていたときだった。

ポチからきたメッセージを見た瞬間、私は固まった。
「ごめん、別れよう。好きだけど、恋人の関係が個人的に厳しくて」
自分から告白してきたのに自由すぎる人だと、呆れてしまったのを覚えている。
「それなら最初から告白するなよ」と思いながら、私は簡単に、今までのお礼と別れの言葉を返信した。

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母親と友人に報告すると、今までのことを知っているからか、すごく心配された。
でも、私はまったくショックを受けていなかった。
「やっと終わった」とホッとして、気持ちが一気に楽になった。

このときは振られる側だったけれど、先に別れを考えていたのは多分、私。
私があげたにも関わらず、バレンタインのお返しや誕生日のプレゼントがないこと。
誕生日に「おめでとう」の一言もないこと。
身だしなみなど、衛生的にだらしないところ。
どんどん嫌な部分が積み重なっていき、交際3ヵ月目の時点で少しずつ気持ちが離れていた。

そして決定的だったのは、私の前に同じ会社の後輩と付き合っていたのを隠していたこと。
共通の知り合いから聞いたのだが、私と同じ状況になって振られていたことを知った。
私はそれを彼に聞こうとはせず、ただ色んなことを我慢して過ごす日々が苦痛だった。
だから、別れて良かったと心から感じている。

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自分が思っていることを相手に言えなかったり、相手の気持ちを優先してしまったり。
恋愛だけに限らず、普段もしてしまうこと。
これらを変えていかないと、気になる人ができても、また同じ思いをすることになる。
「嫌われるのが嫌だから」
「相手を傷つけたくないから」
そんな言い訳はしないで、次は自分に正直でいられる恋愛をして幸せになってみせる。