あれは高校を卒業した頃だった。私が中学3年生の頃、彼に恋心を抱いていた。

同じクラスで、彼は廊下側の1番前の席。私はベランダ側の1番後ろの席に座っていた。後ろを向いていることが多かった彼と目が合ってはドキドキしていた。彼と目が合うだけで幸せだったのだ。

中学生の頃気になっていた彼と、高校を卒業してから付き合うことに

「誕生日おめでとう!高校卒業もおめでとう!」とメッセージを打った手が緊張で震えた。私はバイトの間も返信が来たか気になっていた。「ありがとう!○○も高校卒業おめでとう」と返信が来て、それから私は彼と連絡を取り続けた。

2人の関係が発展したのは、連絡を取り始めてすぐの事。恋愛の話をする中で、私は中学生の時に彼の事が好きだったことを話した。

すると、彼から「俺も実はあの時、気になってたよ」と想像をしていなかった返信が来た。そして、「○○が良かったらでいいんだけど、俺たち付き合わない?」と彼の一言で交際がスタートした。

付き合って2週間ほどが経ってから、3年振りに会う約束をした。私は地元を離れて進学したため、中学校卒業後は会う機会は一切なかった。高速バスで約2時間の距離。同じ県内なのに、近いようで遠く感じる距離。

私は高校卒業と同時に一人暮らししていたので1泊する予定になり、更に楽しみにその日を待っていた。待っていたのだが、彼一人で来ると思いきや彼の母と弟も一緒にくるという。

当日を迎え、待ち合わせ場所の大きな公園に向かった。久しぶりに会う彼は身長が伸びてガタイがしっかりして、黒縁メガネが似合う青年になっていた。

「久しぶり」。3年ぶりなのでお互い恥ずかしい。恥ずかしいけど、本当に嬉しかった。手を繋いで公園を散歩した。骨ばった手は温かく安心感があった。

私の自宅ではDVDを見て、お昼にパスタを食べた。膝枕で仮眠をする彼の寝顔は可愛かった。しばらくしてショッピングセンターに行くことになり、歩いて向かう途中、彼の携帯が鳴った。

一緒に来ていた母親からだった。この電話により宿泊は取りやめ、帰宅する事になった。私が彼に会ったのは、この日が最後だった。

彼と付き合っていても会えず、私は他の男性と連絡を取るようになった

会いたいから何度か地元に帰ったが、友達を優先する彼に対して次第に私は素っ気なくなっていた。会えない寂しさから、私は出会い系サイトで複数の人と連絡先を交換した。ワンナイトをした人もいた。

後日、彼に連絡をした。
「○日に地元帰るけど会える?」。
「会えると思う!時間つくるよ」。私は再び会えることを期待して地元へ帰った。

地元に着いてから、「今日は何時頃に会える?」と連絡したもののなかなか返信が来ない。返信が来た時には夕方だった。「ごめん!今、友達と遊んでる」。この返信で私の切れかかってた糸が切れた。

「会えるの楽しみにしてたのに……。高速バスの時間だから帰るね」。
「ごめん」。
楽しみにしてた自分がバカみたいで悲しくて切ない。しかし、考えてるうちに怒りにかわってしまった。

彼とは別で連絡を取り合っていた男性がいた。男性は4歳年上。その日は仕事が休みで暇していることもSNSを見て把握済みだった。
「今、なにしてる??」。
「家でゲームしてた」。
「今日って会えたりする?」。
「会えるよ!」。そんなやり取りをして会う約束を付けた。

男性とは数ヶ月やり取りしていたが、会うのはこの日が初めて。「会いたい」と何度か言われたがはぐらかして来た。バスの中で色々な感情があった。彼に対しての気持ち、男性に対しての気持ち……。私は最低な女だと思った。

バス停から歩いて男性との待ち合わせに向かった。待ち合わせ場所は、彼と行くはずだったショッピングセンター。男性を探した。男性は外にある喫煙所でタバコを吸っていた。男性は彼より少し大人びて見えた。

私に気が付くと片手を挙げて、「ちょっと待ってね~」と優しく言ってきた。タバコの火を消してこちらに来る。「じゃあ行こうか」。男性の自宅に歩いて向かった。自宅まではアニメや漫画の話などをした。

自宅に着くと男性はゲームを、私はおすすめされたギャグ漫画を読んだ。座椅子型のソファに2人で座る。その距離が最初は緊張したものの少しずつ安心感が出てくる。たまに当たる肘、それもまたいい。たまにかけてくる声、それも心地いい。3時間ゲームと漫画で過ごしたが、無言でも気まずくなく、逆にその無言が良かった。

私は「私が幸せになる道」を選び、会えない人より会える人を選んだ

気付いたら外が暗くなっていた。 「泊まっていいよ」って言ってくれたから、シャワーとジャージを借りて泊まることにした。

布団は1組しかないため、一緒に入った。男性は腕枕をしてくれた。この腕枕により私の心が解放された。 そっと抱きしめてくれる男性。
「付き合ってる人いないの?」と男性に聞かれた私は、「いないよ」そう嘘をついた。「じゃあ、俺と付き合わない?」。
「うん」。
「本当に俺でいいの?」。
「いいよ、よろしくね」。男性と付き合うことを決めた。

色々な感情があった。一夜を過ごし、朝を迎えた。彼からLINEが入る。「昨日はごめん」。この日から少しずつ連絡が減っていった。

男性には、付き合って3ヶ月したころに全てを話した。私は男性と真剣に交際を進めた。男性から告白を受けて1週間には、私の自宅で同棲をスタートさせた。この時には彼とは連絡を取らなくなった。

彼から連絡来たのは、約1年経つ頃、「久しぶり。トプ画にいるの彼氏?」そう連絡が来た。私は全てを話して謝った。彼からも謝罪された。

あれから数年が経つ。私は男性と2年交際し、結婚をした。現在は2児の母。彼の連絡先はあるものの、連絡は取り合っていない。

正直、もっと素直に彼に話をしていたらと思う時がある。ただあの日、男性に会わなかったら結婚はしてないし、可愛い子供たちにも出会えてない。

私は、私が幸せになる道を選んだ。会えない人より、会える人を選んだ。抱きしめてくれない人より、抱きしめてくれる人を選んだ。嫌いになって彼から離れたわけではないから、今でも気になる自分がいる。私は言葉に出来ない感情をカルマとして背負って生きていく。