コンプレックスのない人など、いない。
自分がコンプレックスだと思っていても、周りの人から見ると、喉から手が出るほど羨ましいものかもしれない。
頭では分かっていても、一度自分の身体に目を向ければ、コンプレックスの塊と対峙することになる。

例えばヘソの形が悪く、今流行っているへそ出しの短めのトップスはおろか、ビキニを着ることも躊躇している。
もちろん胸にボリュームがないことは、ビキニを着たくない理由の一つでもある。
寄せて上げるブラで普段は誤魔化せていても、日によってバストサイズが違うことに周りは気づいているかもしれない。
隠そうと思えば隠せる身体の部位であればいいが、常に見えている部分はなかなかそうもいかない。
なかでも、小学生の頃から悩んでいるのは、ムダ毛の問題だ。

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小学2年生のある日の昼休みに、当時のクラスメイトに「どうしてそんなに腕に毛が生えているの?」と聞かれた。
その子の腕や、周りの子の腕を見て、自分が明らかに毛深いことに気がついてしまった。
これまでもずっと毛深かったのに、そのときはじめて目が見えたかのように、腕毛の存在に気づいてしまった。

ショックを受けたが、そのときは何とかやり過ごした。
年齢が上がって行くにつれ、確実に腕以外の場所の毛も濃くなっていき、処理がしたかったのだが、母親が肌を傷めるという理由で良い顔をしなかった。

夏場でも長い靴下を履いて、制服のスカートとの隙間を埋め、長袖を着た。
小学生のときのように周りから毛深いことを指摘されないか、ビクビクしていた。
高校生になり、ようやくカミソリで処理が叶った。
社会人になり、貯金ができるようになってから、ようやく全身脱毛を契約した。
これで無駄毛とサヨナラできると思ったが、すぐにはなくならないし、パウダールームで顔を合わせるのが、自分より若い人ばかりで早々に行くのが億劫になった。
今は家庭用脱毛器でケアできるまでに毛量は減ったが、自信を持って肌をさらせるレベルにまでは至っていない。

毛をなくすのに何十万もお金を払うことに抵抗がないかと言われれば、そんなことはない。
毛深い自分が嫌なのと、周りからも女を捨てていると思われるのが嫌なのかもしれない。
男性からの目線が気になるのはもちろんのこと、女性の間でもムダ毛がないことは、最低限のマナーということが暗黙の了解になっている節がある。

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高校生になったときに、もう少し毛の処理を早くさせてほしかったと母親に伝えた。
その他にも母親には数え切れないほど、色白に産んでほしかった、であったり、小柄な方が良かったと愚痴をこぼしてきた。
母親はそのたびに、ごめんねと謝るが、すごくわがままで両親やその他の人に対して失礼なことをしていたと気づいた。

コンプレックスを全てポジティブに変換したり、個性だからそのままで良いとなったりすることは難しいと思う。
だからこそ、コンプレックスをなくすために、努力したことを自分で誇れる日が来ればいいなと思う。