3年前、長く付き合っていた彼氏に振られて、私は失意のどん底にいた。
彼氏にありのままの自分を認めてもらえず、ひどく落ち込んだ。そんな時に始めたのが全身脱毛だった。
本当の意味で自分を変えたければ、マインドや行動が一番と理解していたが、当時はとにかく見た目でもなんでも、何かしらの形で生まれ変わりたい気持ちが大きかった。
私にとっては超大金だったが、すがるような気持ちで一括契約をした。過去の自分と決別する儀式のような感覚だったと思う。

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私の首元には小さい斑点のシミがある。これは、当時片思いしていた相手と旅行に行った時に出来たものだ。拭いても拭いても汗が出てくるし、日差しを防ぐのにサングラスや帽子では足りないくらい、とても暑い夏だった。
旅行中、首元が焼けて痒くてたまらないと話したら、「どんな？見せて。ほんとだ、赤いね」と背の高い彼の顔が急に近づいてきて、不意にドキッとしてしまったのをよく覚えている。

色白の私にとって、シミは大敵だ。帰宅して鏡を覗き込んでシミになっているのを発見したとき、「げ、シミができてる！薄くしないと！！」と必死にクリームを塗り込んだ。だがその一方で、旅行中のあのシーンを思い出して、胸がきゅっとなってしまう自分に気が付いた。

結局、クリームの効果が存分には発揮されなかったのか、今も例のシミは残っているのだが、首元を見る度、彼と旅行したこと、そのあと私から告白して振られたことを思い出す。
今となっては、この首元のシミは、彼を好きだった甘酸っぱい過去、勇気を振り絞って彼に告白した勲章として、認めてあげている自分がいる。

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つい先日、仕事のストレスで初めて嘔吐した。個室に間に合わず、職場のトイレで緊急ブザーを押した時、恥ずかしさと情けなさが押し寄せてきた。それとともに「あー、私ここまで追い詰められていたんだ」と気が付いて、ぶわーっと涙が出てきた。

私はもともとお腹が空いていると何もできないし、許されるならば、お腹がはち切れるまで食べていたいタイプだ。なのに今は、一人前の量を完食できるか不安なくらい、調子が悪い。
もしかしたら、今まで美味しいと思って頬張っていたものが、好きなだけ食べられないかもしれない。今後も、仕事で疲れたらトイレに駆け込んでしまうかもしれない。
人生のほとんどを占める仕事に、身体がむしばまれてよいのか。なんで今ストレスを抱えているのか。
色んな不安を覚え、仕事観、もっと広くいえば、人生観を見つめ直すきっかけになった。

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生まれ変わりたくて始めた全身脱毛と、思い出のシミ、ストレスによる胃腸の不調。
私の身体は、過去の私の物語がたくさん詰まっている。
そして、強い自己否定と自己肯定が複雑に入り混じっているのだ。

今、「自分の身体が好きか」と聞かれたら、確実に「NO」と言う。
ちょいぽちゃ枠の私にとって、脚のしぶといセルライトはやっぱり消えてほしい存在だし、全部を好きとは言い難い。なにせ私は、毎朝・毎晩体重計に乗って、肉をつまんでは「明日になったらなくなってないかな～」と無茶なことを考える万年ダイエッターだ。
だが、自分の身体を完全に好きになれないとしても、私の身体は私のものであり、過去の記憶が刻まれていることは紛れもない事実だ。

目下、憎きセルライトくんについては、まずは「あの時は頑張って深夜まで勉強していたから、ついエネルギーチャージでお菓子を食べ過ぎちゃったのよね。あの時は本当に偉かった」と過去を事実として認めてあげたなら、身体だけでなく、考え方のシフトチェンジも含めた未来へのヒントを見つけていける気がする。