特集:「ありがとう」をあの人へ

「私なんて」と言った私を、優しい先生は初めて声を荒らげて怒った

「ありがとう」をあの人へ

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中学生の頃の私は、自分に自信がなく、引っ込み思案で、上手くクラスに溶け込むことができなかった。
かろうじて女子グループの輪の中に入れてもらっても、私の緊張しすぎたぎこちない態度や、趣味嗜好が周りとは異なり、当時流行っていたアイドルグループや音楽の話にまるでついていけなかったことなどから、友達関係は長続きしなかった。
自信のなさが表れたおどおどとした振る舞い。そのうえ、小柄で瘦せっぽちな容姿は見るからに弱そうであっただろう。
私はいじめやからかいの対象になることが少なくなかった。

◎          ◎

中学2年生の頃は、クラスの大半の男子生徒から酷い扱いを受けた。聞こえよがしの悪口を言われるのはまだ良い方で、すれ違いざまに服が少し触れるだけで「汚い」「ばい菌が付いた」と払われ、給食の時は机をくっつけてもらえなかった。
過保護気味で心配性な母親にはもちろん、面倒くさがりで、頼りになるとは思えない担任にも助けを求める気にはならず、時々数少ない小学校からの友人に話を聞いてもらいながら、辛い学校生活に耐えていた。
中3になる頃には、大人になったのだろう、男性生徒たちの態度は和らぎ、収まっていった。ほっと安心したのも束の間、今度は意地悪な女子コンビに目をつけられてしまった。
2人は私の様子を観察して口実を見つけては、私の前に現われて馬鹿にした口調で話しかけてきた。
例えば保護者同伴での進路説明会の翌日。「昨日はお母さんと楽しそうに話してたね」「クラスでは話さないのに、お母さんとは話すんだ。中学生になってお母さんに甘えて、だっさーい」などだ。

傷ついても、言い返すこともできず悔しい思いで過ごしていたある日。当時担任だった20代後半の男性教師に呼び出された。どうやら、クラスメートの1人が、私をからかう2人組の様子を見かねて担任に相談してくれたようだった。
「良ければ話を聞かせてほしい」と話す担任の様子は真剣で、自分を気にかけてくれたクラスメートがいたという事実にも勇気づけられ、私は担任に悩んでいる気持ちを伝えた。
担任は「絶対にやめさせるから!!」と言ってくれ、その時の担任の目を見て、私はこの先生なら信頼できると確信した。
担任はすぐに彼女達を呼び出し、厳重注意をしてくれた。残念ながら完全になくなることはなかったが、以前に比べて確実に頻度は減っていったように思う。

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この日をきっかけに、辛くてどうしようもなくなった時、私はたびたび担任に話をきいてもらうようになった。時折こらえきれずに涙をぽろぽろ流しながら話す私に対して、担任は決して面倒くさがらず、忙しくても時間をとって向き合ってくれた。

いつも優しかった担任だが、一度だけ私に対して声をあらげたことがある。
それは、私がふともらした言葉、「私なんて、いない方が良い」。
その言葉を聞いたとき、それまで優しかった担任の声のトーンが変わった。
「はあ!?」
怒り声をあげた担任は私の肩を掴んで𠮟りつけた。
「今、なんて言った?!いない方がいいだと?!そんなわけないだろう。二度とそんなことを言うんじゃない!」
学校に居場所のないことの多かった私が何の疑問も抱かずにもらした本音だったが、その時の担任はとても傷ついたような顔をしていて、私は担任にそんな悲しい顔をさせる、言ってはいけないことを口にしてしまったと悟り後悔した。

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担任の存在により、私の中学校生活が大きく変わったわけではない。
けれど、話を聞いて寄り添ってくれる人がいること、自分のために真剣に考え、怒ってくれる人がいることに私は確実に心を救われていたのだ。
中学校生活は辛いことの方が多かったが、その後成長した私は、人間関係に恵まれたことも大きいだろう、以前よりも臆せず人と向き合えるようになった。
生涯の友と信じられる親友を得ることもでき、いじめられて一時期、男子恐怖症だったにもかかわらず、一人前に恋をして、大好きな人と結婚した。
担任が言ってくれた通り「私はいない方が良い存在なんかじゃない」。心から信じられる私は今幸せだ。
「私を救ってくれたこと、心から感謝しています」
当時の担任の先生に改めて伝えたい。

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