声が聞こえにくい障害。人手不足で35人のクラスを持つことになった

私が、だれかを切実に頼ったとき……それは子どもたちと保護者です。
私は昨年の今頃、APD(聴覚情報処理障害)という診断を受けました。APDは簡単に言えば聴力には異常ないものの、声や音などが聞こえにくいというものです。人それぞれ重度は違い、私は比較的軽いと思っていますが、ストレスが溜まっているときの症状は重いです。

保育者として働いている私にとって、ある意味致命的だと思いました。
まだまだ言葉が未熟な年齢の子どもたちの声は聞きとりにくく、理解するまでにかなりの時間を要します。また私の場合聴覚からの記憶が難しく、言われたことがすぐに抜けたり、頭に入っていなかったり、どこから声や音が聞こえているのかわからないことも多く、自分の語彙数が少ないこともここからきているものだと思います。

1対1で子どもたちと関われる加配に回りたい、できるだけクラス人数の少ないところを持ちたいという希望はありましたが、現在保育士不足と世間で言われているように勤務している園も保育者不足に悩まされている現状でした。
園長には診断が下りたこと、自分の希望も伝えましたが、実際希望は通らず35人のクラスを任されることになりました。

不安のなかで説明。子どもたちがギューッとしてくれた

他の先生にはこの現状をお伝えし、先生方にもいろんな配慮はしていただいていますが、35人という人数の子どもたち一人ひとりを見ていくことの責任や一人ひとりの発達など理解していくこと、保護者と子どものことについて情報共有、保育を抜けて通院するためお休みをいただくことでコロナでは?という保護者や子どもたちの不安を煽らないようにするためなどを考え、園長と相談した結果子どもたちや保護者にAPDであることを伝えることにしました。
まだまだ浸透していないAPD、障害というレッテルもまだまだ付き物。これを伝えた時、保護者はどう受け取るのか、私から子どもたちや保護者に伝えたいと言ったものの不安でしかありませんでした。

4月にある参観で伝える予定でしたが、コロナで流れてしまい、伝えたのは1学期が終わろうとした7月でした。
今の私の現状、診断が下りたこと、保護者の皆さんにお願いしたいことをお話ししました。どう思われるのか、障害を持っているものが担任をしていいのか、本当に不安でしかありませんでしたが、温かくうなづきながら話を聞いてくださる保護者の皆さん。そんな中静かに私の話を聞く子どもたち、子どもたちには前日にお話しをしていましたが、きっと子どもたちもその場のただならぬ空気を感じていたと思います。

参観終了後、ある一人の子が何も言わずに私にギューっとしてくれました。その後も何人もの子どもたちが私にギューっとしてくれました。そのギューはとても強く私に力をくれるような、そんな感じでした。
“こんな担任でごめんね”と思いながら、でも子どもたちのギューのおかげで頑張らないとなと思った瞬間でもありました。

温かい励ましの言葉に、伝えて正解だと思った

参観や行事の感想を毎度募っていたので、今回も募っているとたくさんの励ましの言葉をいただきました。
「子どもには説明しましたが、うるさかったら逆にすみません。いつも元気な先生が子どもも私も大好きです!」「先生の耳の調子が良くないと知って驚きました。そんな様子を全く感じさせないくらい頑張ってくださっていたのだと知って感謝の気持ちでいっぱいです」「人の前で話すことはとても勇気が必要なことだと思っています。どんな状況でもこどもたちは先生のことが大好きです」と本当に温かいお言葉をいただき、私がお願いした『どんなことも全てメモでください』ということはほとんどの方が実践してくださっています。

私の周りにも障害を持ちながら働いておられる方がいないため、どうしていくことが正解なのかわかりませんでしたし、言わなくてもいいんじゃないかとお話しをしていただきましたが、私は今回こどもたちや保護者に伝えたことが正解だったと思っています。

伝えたことで子どもたちも気にして近くで話してくれたり、私の気づいていないところで子どもたちが教えてくれたり助けてくれたり、4歳児の子どもたちは私にとってのヒーローです。
来年度は主治医の判断により担任から外れることになっていますが、このヒーローたちの成長と活躍を一番に願っています。