この鬱陶しい暑さを感じ始めると、決まって思い出すことがある。
それは小学生の夏。私が通っていた小学校に赴任してきた一人の先生。彼女の赴任がきっかけで、この小学校はたちまち「よさこい小学校」へと変貌していくのだった……。

私の街でも、本場に勝らずとも劣らないくらいの大きなよさこい祭りがある。先生は、その祭りでも優秀な賞をとるくらいのチームに所属している人だった。

その先生がきてから、私の小学校の運動会では、児童のよさこいが披露されるようになった。運動会の目玉といっても過言ではない組体操もよさこいがMIXされたもので、ちょうど私が高学年になる頃だった。

今まで、運動という運動を全くしてこなかった完全インドア派の私だったが、ひと目でよさこいのカッコよさに惚れてしまったのだ。

その年から設立された校内のよさこいクラブに入り、休みの日も校外の祭りで披露するために他の学校と合同でよさこいの練習をしていた。地域のお祭りや高齢者施設へのボランティアなど、いろいろな形でよさこいを披露していた。

多分人生で一番、体力も運動神経もあった時期だろう……。

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その中で、演舞を始めるときに口上のようなものを読み上げるのだが……チームを代表して私がしていたのだ。
正直、自分で考えた口上の内容は一文も思い出せないが、初めて自分の、この決して女の子らしいとは言えない低音ボイスが、よさこいの雰囲気にはもってこいだと褒められたのがとても嬉しかったのは覚えている。今となれば恥ずかしくもいい思い出である。

今思えば、自分で考えたポエムをみんなの出番の前に堂々とマイク越しに発表しているのだから、めちゃくちゃ恥ずかしいではないか。

本来なら、チームの指導者的存在の人がするものである口上や煽りも児童が中心になってしていたのは、先生の考えがあったのかもしれないと思う。

よさこいだけでなく、何にでも児童のクリエイティブな要素を引き出すのがうまい先生だったと思う。小学6年生で担任だったその先生は、元気で感情豊かで、熱血で、みんなの人気者だった。還暦を迎えてもよさこいを踊り続ける先生には一生かなわないなと思う。

結局、中学校にあがった私はまたインドアまっしぐらになるのだけれど……。

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今でも夏になるとよさこい祭りを見に行くし、お祭りや夏フェスといった夏に音楽が鳴り響く集まりは、細胞が沸騰するくらい大好きなのだ。夏の蒸し暑さの中、自分の体力の限界も知らずに踊ることの楽しさといったら。

卒業してから一度、よさこい祭りに行って素人参加したら、数年経っていても身体が覚えていて自分でもびっくりした(そして飛び入り参加者の中で優秀な人に配られるメダルみたいなものを首にかけてもらって、一応経験者なので申し訳なくなった)。

今はもう、ほとんど踊ることはなくなったし、あの頃のようなオバケ体力はないけれど、気持ちはいつだって音楽に合わせて踊り弾けているのだ。

これは、子供の頃から私の身体に刻まれた夏の呪いなのだな……と、祭りに行く度に実感する。