インターネット恋愛と聞くと、人々はどんなイメージを思い浮かべるのだろうか。
軽薄?お遊び?危険?すっかりインターネットの住人である私の感覚は麻痺しているので、過去の自分に尋ねようとも思ったが、今更思い出せない。断念。ともあれ、あまり良い印象は持たれないんだろうな、とは思う。
しかし、私の心を支えたのもまた、インターネット恋愛だった。
私がいたジャンルはあまり褒められたものではなく、非常に人を選ぶものなので、出会い等は伏せさせていただきたい。ご容赦を。
ただ、前提として、同性愛への理解がある世界だったことは記しておく。
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私の想い人は、6つ年の離れた女性だった。
私たちは恋人ではなかったけれど、お互い淡い好意を寄せていたし、それをお互いに理解していた。友達以上恋人未満、一番楽しい時期だったろう。尤も、インターネット恋愛においてはさほど珍しいことでもない。
彼女には友人が多かった。彼女がインターネット上の同じジャンル内で出会った友人たちと、私たちを合わせて、5人でよく過ごしていた。中には、数年来の付き合いで、彼女と実際に会って遊ぶこともある人もいた。毎晩のようにグループ通話を繋いで、ひたすら雑談をしたりゲームをしたり。私は一番年下だったこともあるのか、よく可愛がってもらった。
当時、私は進学校に通う高校3年生だった。
周りが受験モードの中、早々にAO入試で大学が決まった私は学校で孤立した。友人がいなかったわけではない。ただ、気まずくて、何を話すべきか思いつけなくて、自然と距離を取るようになった。だから、学校の外に居場所があって楽しかった。
彼女は気まぐれで、少し自由奔放すぎるところがあったけれど、他者をよく見ている人だった。知り合って2週間ほどで、私の性格や弱点はあっさりばれてしまった。そんな彼女に振り回されつつも、私は幸せだった。
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そんな日々が続いたのは、冬、せいぜい2カ月程度だっただろうか。彼女と出会ったのは秋頃なので、彼女と過ごした時間すらも3~4ヶ月くらい。5人一緒に始めたゲームは彼女が別の友人から勧められたもので、友人の友人、そのまた友人と、あっという間に交友関係が広がった。
徐々に5人が揃って遊ぶ頻度も減っていく中、ある日、彼女と付き合いの長い友人に個人トークで告げられた。
「あなたは悪くないんだけど、縁を切りたい」
どうやら、私が最近ゲームでよく一緒に遊ぶ子のことが苦手らしい。少しショックだったが、まあ所詮インターネット、人間関係の希薄さは当然と言えば当然だった。グループチャットも退出した。問題は、彼女との関係についてだった。
別に、二人だけで話したり遊んだりするのなら構わなかったのだろう。けれど、私は、彼女とも決別することにした。縁を切りたいと言った友人は、彼女と一番仲が良かったから。ゲームでお互いをブロックし合ったのに、彼女を介して鉢合わせたら?私とあの子の縁が切れることで、彼女に気を使わせることになるのか?そんな思いもあったけれど、一番は、きっと彼女は私とはあまり過ごしてくれなくなると分かっていたからだ。
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楽しいことが好きな彼女は皆がいる方を選ぶだろうから。……実際はどうなのか、分かるはずもないが、もしそうなったらと思うと怖くて堪らなくて、自分から離れることを選んだ。
彼女は、「本当にいいの」と一度確認をした。
「いい」「……わかった。元気で、頑張って。幸せになれるように願ってる」なんて会話が最後だった。
貴方と幸せになりたかった、とは言えなかった。
そんな冬から、もう一回冬を経験して、今や夏が訪れつつある。
今でもたまに彼女の夢に見る。恋情はない。
けれど、孤独な18の冬を支えてくれた彼女のことは、忘れられないし、忘れたくないな、と思う。彼女は私のことを覚えているのだろうか。彼女や友人たちが今どう過ごしているのか分からないが、幸せであればいいなと願うのみだ。
インターネットでの人間関係は、脆くて、希薄で、儚い。けれど、こうして深く心に刻まれることもある。そんな出会いを経験できたことは幸せなのかも。
そしてもし、この文章が貴方の目に留まっているのなら、もっと幸せだ。インターネットの海から、私を見つけてくれた貴方に感謝を。