大学四年生の春。部活の引退試合に、負けた。
チーム戦でこんなことを言うのはナンセンスだが、100%私のせいだった。
チームを引っ張るリーダーだったのに、直前から調子を崩し、望ましい結果を出せなかった。
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悔し涙を流し続ける一方で、心の中では「お前のせいだ」と怒り心頭で吼える私がいた。
でも、どうすればよかった?この一年、特にこの数か月、私は頑張りっぱなしだったと思う。
就職活動と授業の課題に常に追い立てられながら、可能な限りの時間を部活での練習に費やした。心が休まる時間など少しもなかったし、あれ以上頑張れたとも思えない。後悔はあまりなくて、ただ後輩やチームメイト、応援してくれた人達への申し訳なさだけがあった。
その傷心の心を抉ったのが、今季で退任されるコーチのSNSでの発言だった。
「のびのび競技を楽しんで欲しい。その思いで、『見守る指導者』として振る舞ってきましたが、それを無事やりきれたと思います」
は?と思ってしまった。
私たちが負けたのに?私は最後に全力を出し切ることさえ叶わなかったのに?
「やりきれた」と言われたことに怒りが込み上げてきた。
一応弁護しておくと、このコーチは立場上「男子コーチ」で、私たち女子チームの試合でのサポートは担当されていない。ただ練習では男女分け隔てなく見ていたし、事実上部活全体のコーチと言っても過言ではなかっただろう。
それから「見守る指導者」というスタンスも、私は最初から知っていた。そのおかげで悪い意味での「コーチからの視線」を気にすることなく、のびのび部活に打ち込めていたのは事実だ。
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でも。そのスタンスは、あなたの経験とか信条からそうしていたんでしょう?
私たちが「そうして欲しい」って言ったからそうしてたんじゃないでしょう?
私は少なくとも強くなりたかったし、もっと色んなことを、厳しくてもいいからつきっきりで教えて欲しかった。
でも、言えるはずなかった。だって私は経験者で、コーチに教わる時間は未経験の子が優先されるべきだと思ったんだもの。まだまだこれから伸びしろのある後輩たちがいっぱい頼るべきだと思ったんだもの。
皆だって悩んでるはずなのに、仮にも「コーチ」としている人からアドバイスをもらう時間を、女子リーダーの私が使い潰していいはずないじゃない。そんな私の「頼れない」もどかしさを、少しも想像すらせずに「やりきった」なんて言えてしまうの?
なによその自己満足。この数か月、いや一年間、ずっと成績が伸びなかった私を見てたでしょう。苦しんでる私を見てたでしょう。
ふざけるな、ふざけるなふざけるな。
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でもそれ、本当にコーチのせいなの?
こう一人の私がささやいた。
頼るチャンスはきっといくらでもあったよ。それを活かせなかったのはあなた自身のせいじゃない?一人で悩みこんで、人を頼る余裕も勇気もなくしてた、あなたのせいじゃない?無意識のうちに、人が助けにくいような雰囲気を作っていたんじゃない?結局全部あなたのせいなんじゃない?ねえ。
心が重たくなって、壊れそうで、でも、どこに吐き出していいかもわからない。
リーダーの重みを無視して、一度くらい相談すればよかった?もっと自分で考えて考えて、しっかり不調の原因を解明できればよかった?私の頑張り方、そんなに間違ってた?
考えれば考えるほど、自分が嫌いになるばかりだ。
あんなに好きだったのに、今では競技のことを思い起こすだけで、体が重くなるくらい、苦しいのだ。