初めて読んだ時から、10年以上の月日が経つ。
あなたの心に、何年も消えない言葉はありますか。
私が出会った、大好きな言葉についてのお話。

小学生のときに読んだ本で見つけた言葉が忘れられない

「君の人生は長く、世界は果てしなく広い。肩の力を抜いていこう」
この言葉に出会ったのは、おそらく小学校5年生くらいの時だ。
香月日輪先生の「妖怪アパートの幽雅な日常」という本に出てくる台詞。

交通事故で両親を亡くした主人公・夕士は高校進学を機に寮生活を決めるも、入学直前に火事で寮が全焼。
困った夕士が出会ったのは「妖怪アパート」と呼ばれる場所だった。
好条件につられ、入居を決めるもそこは本当に「妖怪」のアパート。
子供の幽霊、手しかない賄いさん。一応人間らしいけれど、骨董屋に古本屋、霊媒師に童話作家。
人間なのか妖怪なのかわからないくらい濃いキャラクターが勢ぞろいしたアパートで“普通”だったはずの夕士の“普通”は壊れていく。
沢山の人と出会って、考えて、経験を積んでいく夕士が成長する姿に元気が貰える作品だ。

この本の中に出てくる、忘れられない台詞。
それは夕士が入居してしばらくたったある日、夕士が尊敬する住民から言われた台詞だ。
「君の人生は長く、世界は果てしなく広い。肩の力を抜いていこう」

その言葉が、小さかった自分の世界を壊してくれた

この台詞を初めて読んだ時、ハッとした。
私は本来、心配性で失敗を恐れる人間だ。しかも人見知り。
怒られたくないから、提出物の締切は絶対守るようにした。
失敗が怖いから、失敗したらどうしようと怯えていた。
人見知りだから、新しい環境に変わることを恐れていた。
失敗を恐れ、変化を求めずひっそりと生きていた。

だけど、この台詞を読んで世界が変わった気がした。
自分のミスは人生の中で小さなもの。自分のミスで世界が変わるわけでもない。
自分の小さかった世界が、壊れていく音がした。
あの瞬間の音は今までも、これからも忘れることはないだろう。

失敗したらと考えるが、この言葉が自分を奮い立たせる

私の人生を変えてくれたこの本に出会ってから、色々なことに挑戦してみた。
どうしても志望校を諦められなくて、合格率40%のまま高校受験をした。
自分のやりたいという気持ちを優先して、両親に心配されながらイベントを企画運営をし続けた。

失敗したらどうしよう、上手くいかなかったらどうしよう、と考えなかったと言ったら噓になる。
そのたびに、この台詞を思い出して自分を奮い立たせていた。
結果的にすべて成功したけれど、この台詞がなかったら途中で挫けていただろう。

人生100年時代と言われ、世界中が大きく変わった。
今なお変わり続ける世の中で、自分のやりたいことはなんだろうか。
普通に進学して、就職して、人生をぼんやり生きていく。
それもまた幸せな人生だと思う。
けれど、こんなに広い世の中で、自由に体が動く今。
自分がやりたいこと、挑戦してみたいことを極限まで考えてみたい。
だって、「君の人生は長く、世界は果てしなく広い」のだから。
妖怪アパートは、人生を変えてくれる場所で、背中を押してくれる本みたいだ。