大学の頃、カウンセリングを受けていた。
会ったこともない、どこに住んでいるかも分からない、顔すら知らない人だった。
ネットで知り合い、私と似た悩みを乗り越えてカウンセラーになった方だった。
大学のころから、社会人3年目まで。
実に4年ほど、たまに話を聞いて貰っていた。
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その人と、私の出会いは、4年前まで遡る。
4年前、私は就職活動に勤しんでいた。
クリエイティブな仕事を夢見ていた、子どものころ。子どものころは漫画やアニメがすごく好きだったので、大学生になったら、文学部に入って、漫画の編集者になるというのが夢だった(子どもの夢にしては、あまり可愛らしくない夢だなぁと今になって思う……)。
その後、高校受験、大学受験も自分なりにかなり努力して希望の文学部で学ぶことになる。憧れの大学生活で、サークルにも所属した。フリーペーパーを作るサークルだった。なんの迷いもなく、私がやりたかったことはこれだ!と入ることをすぐに決めた。
就活の前まで、所属していたのだが、活動をしていた3年間で、雑誌を作るということに対して、自分は向いていないのではないかと気付いてしまった。
編集のセンスが無い、発想もそこまで良いものができない、当時の私はそう思い込んでしまっていた。
今から思えば、見せ方やデザインの勉強不足だと分かるのだが、そのときはそれを教えてくれる人もおらず、ただ自分の中で「やりきってしまった」感が充満していた。
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やりたいことと長年の夢が無くなってしまった私は、希望も目的も無いままに、周囲に流されて空虚な就職活動を始めた。
就活は軸を決めなさい、就活アドバイザーに言われたので、なんとなく自分でもできそうな一般事務職を希望した。
色んな説明会、就職フェアに、黒ずくめなリクルートのスーツに囲まれながら話を聞く日々。
面接では和やかだったのに落とされたり、面接の日程調整の連絡が来ないままうやむやにされるという、社会人としてどうなの?という大人もいた。
もちろん、学生に誠実に対応してくれる良い会社もあった。
だが、次第にメンタルが追い込まれていたところに、運良く今勤めている会社の内定が決まった。その直後、燃え尽きてしまった。
同時に家族関係、恋愛もうまく行っておらず、それが引き金となって、卒業するくらいまで落ち込む日が続いた。
それでも、周囲の温かさがありがたかった。
どれだけ不調を訴えても、私から離れる人はおらず、周りに恵まれていたと思う。
しかしメンタルの不調は、周りの人に言うのが気が引けた。それくらい、自分の内面で起こっていることが自分で受け入れられなかった。
私はネットで、自分と同じ症状を克服したカウンセラーと知り合うことになる。
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その人は、どんなことも否定せず、ひたすら聴いてくれた。あのときの自分は必死で、何度涙を流したか分からない。聴く方もかなりのエネルギーを遣わせたに違いない。
頻繁にお世話になったのは、卒業までで、卒業して働きはじめてからは、半年に1度ほど、しんどい時に聴いてもらうくらいだった。
数ヵ月前、結婚が決まり、転職も決まったので、報告しようと久々に連絡をしてみたが、返信がなかった。
その方に、何かがあったのか、もしくは関係性がカウンセラーと客という立場を越えてしまうのを防ぐためなのか。本当のところは分からない。
もう連絡が取れなくなってしまったが、最後になるなら、その方には感謝を伝えたかった。本当にありがとうございました。と、言っても足りないくらいだ。
会ったことも無い、顔も知らない赤の他人だけど、私にとってはしんどい時に支えてもらった大切な人。
直接は伝えられなかったけれど、あなたの幸せを、遠くから祈っています。