1人でいることが好きだ。家に居ることが好きだ。
ご飯も食べずにベッドの上でゴロゴロとして、気が向いたら掃除や洗濯をして、それが終わったら音楽を聴きながら妄想にふけったり、チマチマアクセサリーを作ったり……。飽きたら図書館で借りた本を読んで、その後充電満タンの最近手に入れたゲームで勇者になってみたり。
とにかく一日家に居る、一人遊びが大好きだ。

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しかし、そんな1日は月にそうそう無い。
仕事が週5もあれば、おのずと休みの日は決まってくる。私生活の予定や友達との交流などは勿論休みの日に入る。1人になるのは難しい。
誰かと一緒にいる時なら、何かイレギュラーなことが起こっても大抵寛大にそれさえも楽しんでしまえる私だが、1人でいる時は別。寛いでゆったりしているところにくるスマホの通知音や、不意に鳴るインターホンの異質でどこか陽気なピンポーンという音に、心臓がギュッと縮こまるくらい驚いてしまう。そして同時に誰かが私に接触しようとしている事実に不快感が沸く。
イライラしながらも冷静に、出来るだけ物音を立てないように、そして自動点灯の廊下の電気が反応しないように遠くから玄関に来た人物を画面で確認する。完全に居留守常習犯の行動である。

だけど許してほしい。傍から見ればだらしなく暇そうに見えても、このゴロゴロは貴重なゴロゴロなのだ。“何もしない”をすると決めた女の大切な時間を邪魔されたくはない。
まぁ、たいてい私の家を訪ねてくるのはお節介焼きの母で、買い物のついでにと私に食料やらよく分からない便利グッズやらを届けに来るだけなのだ。が、時々作業服を着た人とか、二人組のおばさまとかスーツの人がやってくる。その時のテンション・服装にもよるけれど、たいていの場合私は居留守を決め込む。
本当に用のある人はまた後日来るだろうし、なんらかの形で来たことを示す手紙とか入れてくれる。だから別に、まぁいいでしょう、この対応で。

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こうして文章を書いていることも、私の貴重な1人の時間に出来る事。この時間ももちろん邪魔をされたくはない訳だけれど……。今もまた不意にインターホンの音が聞こえた。
今日は誰が来てくれちゃったのか。居留守を使うか、対応するか、重い腰を上げる前にもう一度鳴るインターホン。この感じはきっと母だろうな。そんなこんなで対応に出るべく立ち上がった時、不意にこんな想いが浮かんできた。
私が1人でいる時間を謳歌できるのは、大前提で家族、友達、仲間と繋がっていると当たり前のように信頼しているから。
私は孤独じゃない。だから1人の時間を大切にしているのだと。

誰にも邪魔されたくない、そんな強い想いが沸くのも、“誰かがいつも私を気にかけてくれている“から起こる事。そう考えると1人時間を大事にしたいだなんて、私はとても有り難く贅沢な事を言ってるのかもしれない。なら、こうした突然の訪問者にも少しだけ感謝できる日が来るのかもしれない。
という事で、今日の訪問者は特別に邪険に扱わずお茶の一杯でも出して、少しだけティータイムを楽しもうかと思う。