私は新卒社会人1年目。日々覚えなくてはいけないことが沢山あり、また、上手くいかずに悩んだり自分が嫌になることも沢山ある。
そんな私の背中を押してくれる言葉は、高校3年生の時、英語の授業での先生の言葉である。

◎          ◎

それは第1回目の定期試験前の授業だった。詳しいことはあまり覚えていないが、先生のピリピリした雰囲気とその言葉だけははっきりと覚えている。
たぶん、テスト前なのに提出物が全然進んでいなかったり、勉強しようとする雰囲気があまりなかったりしたため、受験生なんだから……とお説教が始まり、その中でクラス全体に向けてその一言を先生が言ったのだと思う。

「もっと貪欲になりなさい」
しんとした静かな教室に、先生のその声だけが聞こえる。クラス全体に向けた言葉だったが、その時の私にはとても刺さった。
それはこの時、これくらいでいいや、という気持ちが私の中にあったからだと思う。高得点を取れなくても、赤点を取らなければいい。とりあえず、提出物が終わっていればいい。きっと低い目標で満足していたのだ。
私はいつだって消極的で。勉強に限らず、部活も行事も習い事も。受験生でありながら、大学のことなんてあまり考えてもなかったし、もっともっと上へ……と思うタイプではなかった。

◎          ◎

勉強は、英語は特にできる方ではなかったし、部活も結果を残せていなかったから、高い目標を立てて達成できなかった時が怖かったのかもしれない。結果がついてこなかったらと思うと、これくらいでいいやと思っていた方が楽だった。取りたい点数やなりたい姿があっても周りにそんなのできるわけなくない?と思われるのも嫌で、〇〇じゃなければいい、というような言い方をよくしていた。

また、貪欲という言葉は、どちらかと言えば悪い意味で使うと思っていた。そのため、貪欲になりなさいと言われた時は、驚いた。だからこそ印象にも残っているのだと思う。
欲深いという意味だけでなく、意欲的、積極的に、という意味でも使えるのだということも知った。

今でも諦めそうになる時に、先生のこの言葉を思い出し、背中を押され、もう少し頑張ってみようかなと思える日がある。
もちろん、妥協した方がいい時だってあるとは思う。でも、やりたいと思ったことはまず、やってみたい。やらずに自分にはできないとか向いてないとか思いたくない。私は人にどう思われるかをよく考えてしまうけれど、少しくらい自分の気持ちを優先させてみてもいいのではないか。

◎          ◎

社会人1年目。分からないことばかりで、自分でも何が分からないのかわからないこともある。だけど、消極的にならずに、貪欲に学び、自分にできることを増やしていきたい。すぐには先輩方のようになれないことばかりだが、積極性は忘れずに、日々を積み重ねていきたい。
すぐに結果が見えなくても、消極的な日々と積極的な日々では、一年後の姿はきっと違ってくるはずだ。
自分に妥協しない、貪欲になれ。
迷って動けなくなりそうな時に、心の中でそう自分に言い聞かせる。