とある夏の夜、高校生の私は数人の友人と小さなお泊まり会をしていた。
彼女らは他校出身であるため、LINEでは度々会話をするものの、直接対面で話に花を咲かせることは稀だった。そのため、このお泊まり会は、もっと彼女らの経験や思いを通して内面に入り込み絆を深めるものであった。
そして、私はこのお泊まり会で初めての体験をした。人生初の「つや話」のデビューだ。
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私は家庭の影響により、そのような話題はもちろん、男女交際の話題でさえシャットアウトされて育ってきた。恋愛ドラマ、恋愛漫画は徹底的に禁止された。そのため、図書館でこっそり読む本と数少ない友人からの「恋バナ」が男女交際や恋愛における数少ない教科書であった。
好奇心で「濡れ場」の多い小説に手を出したこともあったが、正直に言えば登場人物が何を考えているかわからなかったため、途中で断念した。そのため、つや話に対する耐性はそこまで無かった。むしろ、タブーだと思っていた。
友人らは私の家庭環境はもちろん知らない。そのため、遠慮なしに恋人との行為について私にお話をしてきた。話を聞く中で、そのようなお話は信頼できる人、口が堅い人にしかできないということを察した。そのため、笑顔で聞き流すことをやめて真剣に受け止めることに決めた。
友人たちの話は生々しくも、恋人への愛情に溢れていた。公にはできない分、赤裸々に恋人への思いや自分の意見を表現していた。人のことをここまで愛せる人は、恋人からさぞかし多くの愛を与えてもらっているのだろう。
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私は友人らの話を聞く中で、当時好きだった人の事を思い出した(以下、Oとする)。
Oは大人の男性である。背中や腕に抱きつくことも、隣に密着して話すことも許してくださった。そして、いつも何かと気にかけてくださる。容姿を褒めてくださった時は嬉しくなってしまった。
つや話をしていく中で私の順番が回ってきた時、友人たちにその話をした。友人はちょっといたずらっぽい笑みを浮かべて、「その人、もしかしたらかなりたぬきちゃんに興奮しているかもよ」と話し、男の人の興奮の仕方について詳しくお話してくれた。
おませな友人いわく、「胸の大きい女性(当時私はHカップあった)に抱きつかれたら男の人は理性との勝負よ」だそうだ。
つや話での学びから、私はちょっぴり耳年増になってしまった。そして、Oにくっつくのが少し恥ずかしくなってしまった。しかし、いつまで経っても逃げ続けてはいけないため、思い切って好きな人にいつものように話しかけた。
つや話を聞いた後の出来事のためか、やたら好きな人の体温が生々しく伝わってきた。好きな人の心音が私の体に木霊するようだ。そして、Oの広く大きな背中に私の胸は押しつぶされていた。
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2人とも汗ばんでいるため、より体の感触がわかってしまう。私の口元はOの首や耳に近く、微かにコーヒーにまじった甘い匂いがした。つや話のおかげで、身体的な距離がかなり近いところにあることを察した。
恋愛はどうやら、淡くてふわふわした気持ち、浮かれている気持ちだけではないらしい。身体的なスキンシップも恋愛のうちなのだ。私は胸をときめかせながら背中に顔を近づけた。
そして、Oはいつものように私に構ってくれた。私の精一杯の、でもいつも通りの接し方ではどうやら引き続き子ども(Oいわく、娘のようなもの)扱いをされてしまうようだ。
つや話を聞いたからって心も体もすぐに成長できる訳ではなく、相手と接するテクニックが磨かれる訳でもない。私はつや話を聞いて、ただのOとの関わりにとても生々しいものが追加されたという恋愛面での成長が得られた。そもそもOは私に興奮していたのか。ちょっと怖くてOの顔すら見られなかった。
それからOと私は他人の割に身体的にかなり近い距離にいながらも、どこか歪な関係を築いていった。ただ愛して欲しい気持ちからちょっと変わった。
私を娘扱いする男性、その人が私に対して少しでも邪な気持ちを抱いて欲しい、その思いを抱きながら私はOとの日々を過ごした。