大学2年生。理系の大学に通っていた為、2年生の前期はとてつもなく忙しかった。詰め込まれた授業、始まった本格的な実験、レポート、課題。
毎日何かしらに追われて、大変な日々だった。

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そんな春に恋をした。
実験中に見せる笑顔と笑い声。私がおっちょこちょいなミスをするとその彼はよく笑っていた。
最初は「何でこの知らない人はこんなに笑っているのだろう」と不思議に思った。
だって知らない女の子がミスしても周りは笑いを耐えるはず。別に不快には思わなかったけど、「何だ、この人!?」とは思った。

でも、私も私でちょっとしたミスが何回もあり、徐々に彼と話すようになった。
「あぁ、またやらかしちゃったなぁ」と思っても彼は笑ってくれる。
その笑顔に救われた。

「気になる」と思い始めてからは毎日キラキラしていた。
実験の日はとっても楽しみだった。待ち時間にぼーっとしていると、彼から話しかけてくれる事もあり、慌てふためいた。初々しかった。

どうにかもっとお話ししたい。
という欲が増していった。
テスト期間に入る直前、私は勇気を出して「過去問を持っているんだけど、もしよかったらお互い交換しない?」と。
サクサクとLINEを交換した。
どこかぎこちない過去問の話、テストの噂を話した。

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LINEが来るとドキドキして、スタンプで終わっちゃうとちょっと寂しくて、でも明日も頑張ろう!と思えた。
私の幸せな時間。

LINEの途中ですごい雨と雷が鳴り始めた。「今、私のところ夕立がすごいけど、大丈夫?」と話してみた。そこから大学の話題だけでなく、天気の話、お互いの好きなもの、好きな食べ物、夏の楽しみなどなど、会話が広がった。
ドキドキしながら幸せで楽しいひと時。

ある日、お祭りの話になった。私の地元のお祭り。「行ったことある?」と聞くと、彼は「ない」と返事が来た。
私は勇気を出して「テスト終わったら一緒に行かない?」と聞いてみた。

返事が来るまでドキドキ。テスト勉強なんか手につかなかった。
たくさん深呼吸して自分を落ち着かせながら待った。
「うん、いいね!」
軽い返事に驚いた。日程もさくさくと決まって、「ご褒美だね、テスト頑張ろうね」とお互いのモチベーションになった。

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当日、無事にテストを終えた私たちは何の気もなしにお祭りへ行った。
私は前日にどうしていいかわからず、服選びに悩み、深夜2時に寝た。栄養ドリンクを飲んで、デートに臨んだ。

ランチ後にお祭りの会場まで歩いた。
お腹いっぱいの私たちは幸せで徐々に食べ物が消化されていった。同じように緊張もほぐれてお互いの素が見えるようになった。
ずっと笑顔だった。歩く距離は長く、しんどかったけど、好きな彼の隣を歩ける事が幸せだった。

暑さと疲れにばてながらもやっと会場に着いた。大変な人混みですぐに迷子になっちゃいそうだった。「あ、はぐれそう」と思った瞬間、彼から手を繋いだ。
「あー、この人と一緒にいたいな」
私は決断をした。

お祭りの後、夜景に誘った。
自然豊かな所から見る夜景はとても綺麗だったから一緒に見たかった。
疲れた私たちは無言になる事もあったけど、無事に到着した。
誰もいないちょっとした展望台へ向かった。

夜景を見ながら告白をした。
2人で手を繋いで帰宅した夜。その夜の事は今でも忘れられない、私の大切な夏の思い出。
その彼とはご縁が無かったけど、一つ一つの思い出はこれからも大切にしていきたい。