今年もまた、この季節が来てしまった。
暑いしバテてしまうし、夏はとても苦手。
仕事や勉強への集中力も落ちてしまい、「もう無理!」と音を上げそうになる。
そんな私でも、死にものぐるいで頑張った夏があった。
◎ ◎
それは、中学生のときのこと。
私は、ソフトテニス部に所属していた。
好きなスポーツと似ているからという理由で、友人と一緒に入部を決めた。
これが、地獄のはじまりだった。
入部した1年生の12名全員が未経験。
みんなで楽しめればいいと思っていた。
先輩たちは優しく教えてくれるので、「何とかなるだろう」と、すっかり安心しきっていた。
そんな甘い考えをしていた私がバカだった。
求められるレベルが高く、練習メニューがかなりきつい。
ボールを何とか打てる程度なのに、少しミスしただけで顧問からの怒号が飛んでくる。
試合形式の練習になると、あんなに優しかった先輩たちがイライラし、ラケットを地面に叩きつけている人がいた。
全国大会を目指すレベルだと知り、入部したことを後悔し始めた。
1ヵ月経つと、1年生が2名退部していた。
母にちょっといいお値段のラケットを買ってもらったこともあり、私は辞めることができなかった。
まあまあ慣れてきたころに初めて参加した、夏の大会。
先輩とペアを組んで試合に臨んだ。
結果はボロ負けだった。
私が1年生で一番弱い選手だったからか、顧問からは何も言われなかった。
私は最初から期待されていなかった。
顧問が代わるまでは、レギュラー争いという舞台にすら上がれなかった。
軽い気持ちで入ってしまった部活だったけれど、初めて「悔しい」という感情が芽生えた。
強くないなりに、地道にできることをしようと決意した。
夏休みも毎日のように参加し、コート整備やボールの手入れなどの雑務も積極的にしていた。
◎ ◎
2年生になると、明るくて生徒想いな女性の先生が顧問になった。
精神的に楽になり、より練習に集中できるようになった。
「授業だけじゃなくて部活でも努力しているね」と顧問に褒められ、とても嬉しかった。
私は、褒められて伸びるタイプ。
朝練には誰よりも早く行って準備し、先輩が来るまで自主練をするようになった。
休憩時間にも、サーブや技の練習をしていた。
すると、他の中学との練習試合で、勝てることが多くなっていった。
この年の夏の大会では、同じ学年の子とペアを組んだ。
2回戦まで進むことができた。
「来年はもっと勝ち進みたい」と思い、もっと練習に励もうと決めた。
経験者の母に教えてもらいながら、実家でも練習するようになった。
あっという間に月日は流れて、私は3年生になった。
最後の夏の大会に向けて、必死に練習を重ねた。
そして、迎えた当日。
ずっと組んできたペアの子と、試合に臨んだ。
2回戦もストレート勝ちし、3回戦に進んだ。
その時点で、私たち以外の、同じ中学のペアはみんな負けてしまっていた。
部内で一番弱いはずの私たちが残ったことに対して、よく思っていない子がいたようだった。
でも、そのときの私には、そんなことはどうでもよかった。
ズルして勝ち残っているのではなく、努力の成果が今出ている。
だから、堂々として試合に臨むだけ。
県大会出場は逃したものの、結果として4回戦まで進むことができた。
ペアの子と2人で、悔し涙と嬉し涙を流したあの日のことは、今でも鮮明に覚えている。
そして、2年前のあの夏があったからこそ、ここまで頑張れたのだと思った。
◎ ◎
あれから10年以上経った今は、スポーツ自体しなくなってしまった。
「顧問を見返してやる」と決意した夏も、「努力をすれば報われるんだ」と実感したあの夏も、私にとっては人生における原点のひとつ。
今後も、決して忘れることはないだろう。
今年の夏はまだまだこれから。
あることに挑戦しようと思っている。
がむしゃらに頑張っていたあのころのように、とはいかないかもしれない。
輝かしい結果を出せるとも限らない。
それでも私は、自分の努力を信じて前に突き進む。