夏といえば?
……と聞かれたら何を連想するだろう。
アイス!スイカ!海!冷房!冷やし中華!夏祭り!のように美味しい&楽しいことばかりが思い浮かぶのではないだろうか。

私にも夏の楽しい思い出がたくさんある。
友人とプールに行って溺れかけたり…
山登りをして蚊に刺されまくったり…
川でビーチサンダルが流されそうになったり…
可笑しな思い出がいろいろある(ここでは自分の身に起きたあまり嬉しくない夏の思い出が羅列されているが…笑)。

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私には様々な思い出があるわけだが、その中で最も私の中に刻まれた夏は、高校の時の夏期講習である。
「夏期講習…そんなのやったなぁ」と思う人も多いのではないだろうか。
暑い夏…冷房をかけるともったいないので窓を全開にして授業を受ける…
滴った汗がノートに落ち、薄っすらとシミを作る…
あまりにも暑いので下敷きなどで仰ぎながら、先生の授業を受ける…
…といったのが私の抱く夏期講習の印象だ。
あまりにも暑すぎると窓を閉めて冷房をつけるのが一般的だったが、そんな中で悲劇が起こる。

学校内すべての校舎で、冷房がつかなくなったことがあった。
その時の気温は覚えてないが、真夏だったことには違いない。
30人クラスでほぼ全員が出席している教室の中で、ふと冷房が止まってしまった。
ただでさえ暑いのに冷房まで止まってしまっては、みんなの集中力が続くはずがない。

しかも高校では、授業中に飲食をしてはいけなかった(謎ルール)。飲み物を飲むと授業中にトイレへ行ってしまうことがあるからだろうか……。
とにかく、そのようなルールがあるため水分を摂ることは躊躇われた(実際は先生が後ろを向いたときに、みんなでこっそりと水分補給をしていたのだが……)。

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冷房が止まってしまって数分もすると、汗がじんわりと滲んでくる。
私達が着ていたのは半袖のワイシャツだったため、滲んだ汗は目立たなかったが、先生が着ていたカラーのワイシャツには汗が滲んでいた。
暑さとともに、クラスのみんなのやる気が下がっていくのが目に見えて分かる。
暑いと本当に集中ができない。5分という時間がとても長く感じてしまうほどに。
時間が長く感じてしまうような経験は誰しも体験したことはあるのではないか。

そんな灼熱地獄に耐えたあと、やっと休み時間が始まる。
汗でベタベタ、そしてギトギト状態のわたしたちは、自分たちが持ってきた制汗剤や汗ふきシートを、まるで出店のように並べてシェアし合った。

「ギャッツビー持ってる人いる?!頂戴!!!」
「シー・ブリーズ誰かいる人ー?」
「汗ふきシートならここにあるよ!!!」

まるで競りのように叩き売り(売ってはいないが……)が始まった。
休み時間は10分しかない。そんな中で次の授業を集中して受けるためには、なんとかして体を冷やさなければならない。
制汗剤の匂いが教室中に充満し、お花畑を通り越してなんとも表現し難い香りが漂っていた。

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暑さと格闘する夏は今までに多くあったはずだが、これ以上に印象に残った夏はない。
今年もシー・ブリーズをつける季節がやってきた。
つけるとヒンヤリして気持ちがいい。高校の灼熱地獄の時には大変お世話になったものだ。
スーッと鼻孔を突き抜けるシトラスの香り。あの教室の中もこのような匂いが混じっていた。

今となっては懐かしい夏の思い出だ。