私は、シーブリーズの匂いを嗅ぐと、中学時代を思い出す。
私は中学の頃陸上部に所属しており、大会の当日、いつも控え室に入ると、もわっとした暑さの中、すっきりとしたシーブリーズの匂いが漂う。皆それぞれ違う色のシーブリーズをを持ち寄って、気分によってお互いのものを交換して使うこともあった。

私は、シーブリーズの匂いを嗅ぐと、どうしても大会の更衣室を思い出してしまう。
私は部活の練習は好きだけど、試合はあまり好きではなかった。あの独特な緊張感があってピリピリとした雰囲気に飲まれそうになる。
でも、その中でも、陸上競技は一人で戦っていているように見えて、部活の仲間が大きく関わっていると思う。試合の前に掛けられた言葉や、何気ない会話によって、試合前の不安な気持ちを少しだけほぐしてくれる。

陸上部時代に過ごした夏は、私にとって青春の日々だったと思う。ジリジリとした暑さの中、汗を垂らしながら走っていた日々。
練習の休憩時間に、部活仲間と水風船鬼ごっこをしていた。水道の水を手のひらサイズの風船に入れて、相手に向かって投げる。とにかく、びちょびちょに濡れるのだ。まともに当たると、着ている服が透けてしまうほど。すでに練習で汗をかいているので、まあどっちにせよ同じだろうということで、お構いなく投げ合っていた。楽しかったなあ。

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毎週、土曜日の午前中に部活の練習があるのだが、私はいつも土曜日の練習が楽しみだった。たまに、部活の顧問にお願いすると、学校の近くにある図書館の方へ走りに行き、さまざまなトレーニングをする。図書館が森で囲まれているのだが、森の中の坂道をダッシュしたり、階段を利用して筋トレをしたり、原っぱの公園で鬼ごっこをしたりした。
私は、長距離選手だったから、普段の練習では短距離の選手と別々に練習をするけど、図書館での練習は皆が一緒だから、それがすごく嬉しかった。

練習が午前中に終わり、午後そのまま部活仲間が自分の家に来ることもあった。私の家は、学校から見えるほど近かった。
「テスト前だから、一緒に勉強しよう」ということで初めは勉強道具を出すのだけど、結局はほとんど進まない。お菓子を食べて、話していたら結局全然やっていたかったね、で終わってしまう。
でも、そんな日々が、ほんととても楽しかったのだ。当たり前になっていた日々だったけど、今思えば、とても貴重な時間を過ごしていたのだな、と思う。

それと、部活の仲間と「夜市」という夏のお祭りにも行った。最寄駅の一つとなりの駅、すぐ近くで行われるお祭りがある。出店が立ち並び、食べ物はもちろん、雑貨なども売られている。賑わう通りを、かき氷を食べながら歩き、お揃いのブレスレットを買った、とても大切な思い出である。

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私は、走ることが好きだ。だから、陸上部に入った。それと、部活の仲間が好きだった。雰囲気も、好きだった。
何かの団体に属する時、その団体が行う活動そのものが好き、ということももちろん大事だけど、それとそこにいる場所、雰囲気は本当に大切だと思う。中学時代に陸上部に入って、そういう場所にいられたことは本当に幸せだったと思う。部活の仲間に会えて、良かったなと思う。中学時代の、部活の思い出は、これからも大切にしていこうと思う。

私にとって、シーブリーズは、夏の大会を思い出させ、同時に部活で過ごした練習の日々を、雰囲気まで思い出させる懐かしい匂いなのだ。