バイトもコロナの影響でなくて学校も違って、LINEしか繋がる手段がないのに、日程決めて会うの嫌なんだよねとか言われたり、いきなり既読無視されて打ち切られて、行き場のない気持ちはどこにいけばいいの?
こんなに誰かを好きになったのは初めてでこんなに心を開いたのも初めてで、って、恋の始まりはいつだってドキドキでいっぱいなのに、どうして簡単に壊れちゃうのかな。
元カノに浮気されて友達から裏切られた過去があって、離婚した父親に暴力を振るわれていて人を警戒して生きてきた彼。
家庭環境が複雑で人間関係が上手くいかなくて、誰のことも信用できないと思いながらも心の底では深く繋がれる誰かを求めていた私が、彼に惹かれて好きだと思うまで、そう長くはかからなかった。
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自分と似てるところがあると思い込んで、彼になら何でも本音で話せると思ってた。
彼のことを何でも知りたいと思い、人を警戒してても私には本音で接してほしいと願ってた。恋愛も人付き合いも下手な私は距離感をはき違えて、彼のことを知ろうとしすぎて余計、相手の心を閉ざしてしまったのだろう。
位置情報アプリを入れようよと言われて入れて、入れたことでより相手のことが気になって何度もアプリを開く私。LINEの返信が来ないことで他のことが手につかなくなってしょうがない。まだ付き合う、という関係も持っていないのに私たちは相手のプライベートに踏み込み過ぎて、お互いを傷つけあった。
彼がTwitterに私への不満を書き込むようになって、直接言ってくれなかったことへのショックで、もう距離置いたほうがいいよ私たち、と勢いで口走った。本当は距離なんて置きたくないし、誰よりも彼のことを分かっていたかったのに。彼のことを素直じゃなくて不器用だと思ってたけど、私の方が不器用だったのかもしれない。傷つくことを恐れて保険をかけるような形でしか相手と向き合えなかった、自分が必要とされない事実に向き合うことが怖かった。
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俺がいないと生きていけないでしょ頼っていいよ、と言ってくれて嬉しかったのも束の間、知り合いの上司からあの子、依存してるよねと言われたのをきっかけに、俺がいなくても一人で生きていけるようにしといて、依存されたくない、と急に私を突き放した彼。
それが本当に苦しくて、私のこと嫌いなんだよねごめんね、と相手の迷惑も都合も省みず彼に泣きながら電話をかけた。その時から、彼が私のLINEに既読をつけても返事を返すことは無くなった。
それでも彼のインスタやTwitterを見てしまう私。もう忘れた方が楽なのに忘れられなくて、ああ、あの時私が間違えなければ、依存していなければと、許されるなら、私が歯車を狂わせてしまった頃に巻き戻してやり直させてよと、彼と楽しかった頃の記憶を辿るようになった。
彼とうまくいかなかったことで、もう恋なんてしないと思っていた。人との距離感が下手な私は誰とでも間違えてしまうだろう、もうこれ以上傷つきたくない、傷つくくらいなら自分から心を閉ざした方が楽だと思っていた。
でも、それだと一生前に進めないし負けたような気がした。きっとこの先、恋愛でも、仕事でも、友達付き合いでも、傷つかないことなんてないだろう。傷つかなければ、人は次のステージに進めない。
私は何度間違えたら正解を見つけられるのか分からないけれど、それでも、生きていく以上、誰かと関わっていく中において、トライアンドエラーを繰り返しながら、その人その人に合わせた距離感とか接し方を分かっていくんだろう。何をやっても不器用な私だけど、その努力をすることを厭わない生き方をしたいと思う。
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私は誰かに考えすぎとか気にしすぎって言われることが多くて、実際自分でもその通りだと思うけれど、今更ついてしまった思考回路を変えるなんて難しい。それなら、私が苦しんで考え抜いて出した結論は、相手を信用するけど期待はしないこと、相手を変えようと思いあがらないこと、自分と相手は一体だ、なんて思わないことだ。
自分も相手も同じ時に同じことを思っているなんてありえない。自分はこの時こう思うんだから、相手もこう思ってくれるはずだ、大事だと思ってるならこうしてくれるはずだ、とかそれこそ自分の気持ちを相手に投影し始めた瞬間、自己と相手の境界線がボーダーレスになって狂い始めてしまう。違うところがあるから惹かれた訳だし、相手にこうであってほしいと自分の理想を押し付けすぎないことだ。
ありのままの相手を愛せない、受けいれることができない器の小さい私に、あなたを好きでいる資格なんてなかったね。あなたも私に、たくさん我慢してくれていたに違いないのに。
そして知る必要があったのは0でも1でもなくて、0と1の間なのかもしれない。
彼の言葉にいちいち意味を求めようとしなかったら。曖昧さを許すことができていたら、相手も自分のことも、縛り付けて雁字搦めの思考回路の中でもがく必要なんてなかったのかもしれない。
私の話を真面目に聞いてくれたことも、助けてくれたことも、本当に嬉しかったのに、いつからか私が彼の、特別になりたい、彼のことを一番分かっている相手でありたいと思いあがっていた。
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私があなたといた時間、本気であなたのことを好きで、言った言葉は全部本心だし、あなたが私に言ってくれた、「大事にしたいと思ってる」の言葉も、私の中できれいな記憶で残すのが苦しすぎてもう忘れさせてよ。
バイトでの楽しかった時間も一緒にドライブで過ごした時間、電話で話した内容も忘れられない私に対して、あなたは私のことなんて忘れて、他の女の子に手出してるんだよね。
そう、あなたの友達から聞いたよ。体の関係を持ちたい、がゴールのあなたと、精神的なつながりを求めた私とでは、どこが糸がほつれちゃったのかな。
でも、既読無視で終わらせるんじゃなくて、友達に私のことを、「もう関わらないでほしい」と言うんじゃなくて、Twitterに悪口書くのでもなくて、言いたいことは直接言ってよね。
絡まってほつれた糸の結び目を探してぐるぐると同じ場所にいる私とは対照的に、あなたはその糸の先端も握っていないことが悲しくて、私の気持ちは宙ぶらりんになってしまう。