時計の針は夜中の0時を回ったところ。スッキリさっぱり、お風呂から上がった私は、バスタオルで綺麗に身体を拭き取り、パンツを履く。というか、パンツしか履かずに寝室にある大きな鏡の前に向かう。
自分の身体のラインがよく見える。細く長い首、小さな胸、少し浮き出た肋骨にクビれたウエスト。

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一般的に、私は「痩せ過ぎ」の部類に入るらしい。それは自分でもだいぶ前から自覚しているし、むしろソコを目指してきたと言ってもいいくらいだ。
なぜなら、私は太ることにとても強い抵抗がある。食べることは大好きなので、無理な食事制限などはしていないが、毎日お風呂上がりのこの時間、自分の身体のラインをしっかり見ながらエクササイズをしている。
誰から連絡が来ようが、エクササイズの途中で携帯を開くことはない。誰にも邪魔されたくない自分磨きのこの時間。

「少しストイックなのでは?」と周りに言われてはいるが、特に気にはしていない。「痩せ過ぎて魅力ないよ」とか、「ガリガリ過ぎて引くわ」とか、そんな言葉を投げかけてくる男たちの方が引くわ、と内心思ってはいるけど。
別にあなたたちの為に痩せてるわけじゃないの。好きな服を綺麗に着こなしたいから痩せる努力をしているのよ。せっかく女に生まれたんだもの、ヒールを履いて、身体のラインを出して、堂々と歩いていたいの。その辺の道だろうが洒落た大通りだろうがそれは関係ない。常に美しくいたいのだ。

「見せて魅せる」というのが、私の中のモットーである。「美」こそが私の生き甲斐だから。楽しみだから。それなのに、土足でズケズケ入ってきて、心無い言葉を投げかける人間ってどうなのよ、という感じ。
あなたに関係ないじゃない、私は私、あなたはあなた。人の幸せは人それぞれなのだから。

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そんなことを思いながら、私は今日もストイックに身体を捻ったり伸ばしたりしてみる。
ただ、時々呼吸するのを忘れそうになる時がある。必死になりすぎて、そのことしか見えなくなっている時だ。
なかなかに苦しい。そんな時こそ大きく息を吸う。なにも心配いらない。自分のやりたいようにやるだけ。そう自分に言い聞かせて自分磨きに時間を費やす。
お金をかけてジムに行っても良いし、ランニングするのもアリかもしれない。でも、私はお風呂上がりのこの時間、自分の身体から目を背けずに身体を動かすのが好きなのだ。
「あれ?食べ過ぎてお腹出たかな」とか「最近便秘でお腹張ってるな〜」とか。自分の生活習慣を振り返る時間にもなる。それはつまり、自分の人生を振り返ることにも繋がるのかもしれない。

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身体は生活を映す鏡だと私は思っている。若いうちは痩せて美しくいられても、歳を重ねるごとに代謝は落ち、肌はくすみ、目に見えて老化していく。それに抗うようにわたしは美を追い求めているのかもしれない。
痩せ過ぎ?そんなの関係ない。むしろ人より食べてるわ。嘘だと思うなら、あなた今度私と一緒にご飯でもいかがかしら?