「ちゃんとご飯食べてる?過度なダイエットはだめだよ」。医師に言われた言葉である。
私は幼い頃から、身体が比較的丈夫なほうで、病院に通うことは多くなかった。そんな私が、産婦人科にかかることになるなんて。
好きだった男性から返信が来なくなり、原因は自分の容姿だと思った
2020年夏、月経の来ない期間が約3か月続いた。心配になった私は、産婦人科の扉を叩いた。続発性無月経と診断され、医師から食事について指導を受け、薬も内服するよう説明された。なぜ無月経となったのか。心当たりはある。ダイエットだ。
当時、想いを寄せていた男性から、ある時を境にメールの返信が来なくなった。その原因を自分なりに考えてみた。友人からは「縁がなかっただけ。自分を責める必要ないよ」と何度も励まされたが、私は自分の容姿に問題があるからだと結論付けた。
それからというもの、容姿改善のためダイエットに励むようになった。体重を落とす方法、女性芸能人のようなスリムな体型になる方法など、雑誌やネット等ありとあらゆる情報源を徹底的に調べ上げ、容姿改善に取り組んだ。
最終的にたどり着いた方法は、月並みではあるけれども、食事内容の改善と筋肉トレーニングである。食事に関しては、1日に摂取する品数を増やし栄養バランスを保つこと、大豆や卵などのタンパク質を摂取すること、野菜を多く食べることを特に意識するようになった。
食費節約のため肉類は食べず、魚は週1回摂取する程度で、ほとんど白米と野菜中心の生活を送っていた。白米は1日1合、お菓子やお酒・小麦粉はもちろん大好物のパン・麺類は禁止。水は、1日に2リットル摂取することを自分ルールとして課した。
加えて、毎日全身鏡で自分の身体を観察し、余分な肉がついている箇所を確認、たるみが見られる部分は、翌日重点的に筋トレを行うようにした。顔についても、目が小さいことや鼻が低く小鼻が大きいこと、頬肉がついておりフェイスラインが明瞭でないこと、歯並びが悪いこと、Eラインがないことなど、自分の容姿において欠点だと思われる部分に意識が向くようになった。
また、想いを寄せていた男性が好きなアイドルや女性芸能人と自分を比べて、自分の不足している部分や能力を紙に書き出し、自分の内面についても非難するようになった。そのような状態であったからか、突然嘔気に襲われたり、次第に笑顔も少なくなったりしていった。寝つきも悪くなり、自分のことを醜く感じる日々が続いた。
努力が報われ2か月で8㎏減ったけど、身体は「悲鳴」を上げていた
気が付けば、生理が3か月来ておらず、体重を測ってみると約2か月で8㎏減少していた。そんなに体重が落ちていたのかと驚いた一方で、今までの自分の取り組みが数字となって表れたことに対し、努力が認められた気がして嬉しくもあった。
しかし、私は思った。自分はここまでして、自分の容姿をより良くしたかったのかと。生理が止まるということは、身体に過度な負担がかかり、身体が悲鳴を上げているということである。
続発性無月経は、将来不妊症につながるリスクがあり、希望した時に子どもを授かることが難しくなる可能性があるのだ。私は、自分の身体が悲鳴を上げるまで、将来妊娠する可能性を脅かしてまで、体重を落としたかったのか。自分の顔や身体全体を否定してまで、容姿を整えたかったのか。産婦人科からの帰り道、自問自答した。
周囲から「また痩せた?」「もう痩せなくていいってば」と散々言われていたのに、聞く耳を持たず、自分が理想とする姿に近づきたい一心で、ひたすら食事制限と筋トレに励んでいたことを思い出した。
好意を寄せている人から、華奢でかわいいと思われたい。女性として綺麗になりたいし、幸せになりたい。しかし、そう思う気持ちが異常なほど大きいと、繊細である女性の身体に身体症状として表れることを、身をもって知った。
それだけではなく、自分の内面までも否定するようになり、自分の魅力を見失うことにもつながる。当時の私は、自分とアイドルや芸能人を比較して、「自分はここが劣っている」「ここができていない。だから振り向いてもらえなかった」「もっと頑張らなきゃ、あのアイドルみたいに頑張らなきゃ認めてもらえない」など、自分のことを限りなく否定し、他者に対し劣等感を抱いていた。
そうでもしなければ、自分を変えることはできず、魅力的になれないと思ったから。好意を寄せている人に、振り向いてもらえないと思ったから。
自分磨きは素晴らしいことだけど、自分の身体は「大事」にしよう
当時を振り返ってみて、必要以上に自分のこと全てを否定していたと思うと同時に、両親に申し訳ない気持ちになった。私を産んでくれて、ここまで育ててくれて、たくさんの愛情を注いでくれた。その産物である“私”という人間、その全てを、“私”自身が否定することほど、悲しいことはない。
自分の容姿を変えたい、より良くしたいと、自分磨きに取り組むことは素晴らしいことだし、今後も続けていきたいと思っている。しかし、自分の身体を大事にせずに自分磨きに取り組んだって、何も意味がない。
なぜなら、“私”の魅力を見失い、自分のことを好きになれないと思うから。自分が自分を大切にしないで、誰が自分を大切に思い、愛するのか。ダイエットへの過剰な意識が、自分の本来の魅力、自分の強みすらも見失い、自信の喪失につながっていく。自分らしさを見失わない程度に、なりたい理想の姿を追及し、実現していくことが大切である。
現在は、自分の身体が不調を訴えない程度に、食生活の改善や筋力トレーニングに励んでいる。自分の身体と向き合いながら、理想とするなりたい自分に近づいていきたい。
そして、いつかありのままの“私”を魅力的に思ってくれる大切な人に出会い、“幸せ”を手にしたいと思う。