「心理学的に、7年以上続いた友情は一生もの」と聞いた。高校の同級生なら、大学卒業時点でまだ関係が続いている相手、といったところだろうか。
言われてみれば確かに、小学校から大学まで当時とても仲のよかった友達はその時期ごとにいるけれど、今でも気軽に会う相手の方が少ない。
そんなことに思いを馳せていたら、その7年を越えることができたのに今はもう疎遠になってしまった相手のことを思い出した。離れていた間の変わりようにショックを受けてしまった自分のせいだと思っているのだけれど。
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相手は小学校の同級生。2年生の時に転校してきて、新しいクラスで最初に隣の席になった男の子だ。
ほのかに恋愛要素もからんでくるので純粋に友情として話をしていいのかグレーだが、小学生の関係なので一旦男女関係は抜きにする。
彼は坊主頭にめがね、ひょうきんな性格をしていた。あだ名がチキン・リトルだったが、まさにそんなイメージ。当時の私は人見知りが激しく、新しいクラスには知っている人も多いのによりによって転校生が隣の席か……と思っていた。そんな私の思いは一瞬にして消え去ることになるのだが。
彼はよく話しかけてくれたし、偶然にも引っ越してきた場所が私の家から徒歩1分レベルの近所だった。なので放課後はよく一緒に帰ったし、そのあとも一緒に遊んでいた。
芸人のものまねをしたり、おどけてみたり、彼といて全く退屈しなかった。そんなにぎやかな性格だが、誠実で真摯で、好青年という言葉が似合う男の子だった。
そして彼は私のことを好きだと言ってくれた。もちろん付き合うなどという発想はなかったので、純粋にその気持ちをありがたく受け止めて変わらず仲良くしていた。運よく同じクラスになる年も多く、学年が上がるにつれて少しだけ異性として意識したこともあった。
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小学校卒業のタイミングで、私は親の仕事の都合で引っ越すことになった。そのことを担任の先生がクラス全員に伝えたあと、彼が手紙をくれた。
私が引っ越したらさみしくなる、今でも私のことが好きだから手紙を書いてほしい、そしてこのことは誰にも言わないでと書いてあった。
このことで私の気持ちが大きく恋愛寄りに傾いてしまったことは言うまでもない。
引っ越しの当日には見送りに来てくれたし、手紙交換を口約束で終わらせないためか、共通の好きなアーティストの、それも発売されたばかりのCDを貸してくれた。もちろん彼には何度か手紙を書いて送った。
それから3年後に一度会うことができて、今度はメールアドレスを交換した。その当時、私は彼も知っている小学校の同級生と付き合い始めたので、彼と頻繁に連絡を取ることはなかったが、それでも関係は続いていたしお互いの誕生日は祝いあっていた。
大学生になったらLINEを交換し、それこそ気軽に連絡ができるようになった。電話で恋愛相談に乗ってもらったこともある。ブランクは長かったけれど、赤裸々な話を抵抗なくできるくらいには、私の中で1番の男友達だった。
そんな関係だったのだが、大学1年生の春休みに再び会って、そこから離れていくことになってしまう。
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4年ぶりに会った彼の、印象の違いに驚いたことを覚えている。
引っ越し以来初めて会った中学3年生の時は、離れた時から少し大人になったくらいだったのに、大学1年生の彼はかなり派手になっていた。今思い返すと、ホストのような感じだった。
食事に行く約束をしていたので、少し違和感を感じながらも話をしていた。恋愛の話で男はこうだ女はこうだと言っていた。お店を出て歩いているときには車が来ているのに赤信号をゆっくりと歩き、急いだ私に対して「いいんだよそんな、相変わらずまじめだな」と言った。共通の友人から別の機会に聞いた話では、女性関係も荒れ気味だということだった。
そんな彼の姿を見て、勝手ながらかなり幻滅してしまった。あの頃の純粋な、まっすぐな瞳の彼はもういなくなってしまったんだと感じて、とても悲しくなった。人も自分も変わっていくのは当たり前のことなのだが、それでも好青年だった彼がチャラ男に変わってしまったことには耐えがたい衝撃を受けた。
その後、彼とは会っていないし連絡も取っていない。SNSはフォローしていたが、内容もそんな感じだったので見るに堪えなくてミュートしてしまった。
あちらはどう思っているのかわからないが、連絡をしてこないということはそこまで重要だと思われていないのだろう。
引っ越してそれっきりになってしまった人が多い中、数年の時を超えて関係をつなぐことができた数少ない大切な相手。そんな相手でも、お互いの環境の変化でいつ疎遠になってしまうかわからないんだと感じた。
エゴだけれど思い出の中の純粋な彼のままでいてほしいので、寂しいけれどきっともう会うことはない。元気でいてほしい、ただそれだけを願っている。