私には感謝したい人がいる。
その方は職場の前のチームの女性で、年齢は親ほど離れている。
チーム内の補佐業務を担当しているアシスタント職の方で、「チームのお母さん」的存在だ。
改まって感謝を伝える機会は、やってこないと思うので、これまでの感謝の気持ちをここに綴りたい。

◎          ◎

彼女のことは、便宜上Aさんと呼ぶ。
Aさんは、チームの中では、一番長く在籍している方であったので、質問への対応の仕方や、ものの在り処の質問だけでなく、人間関係のコツなども教えてもらっていた。
Aさんには、二人のお子さんがおり、長男は私と同い年だそうだ。
私が働き始めた社会人1年目の時は、まだAさんの長男は学生であったため、「息子と同い年なのに働いていてえらい」とよく言われていた。

私は就職を機に上京して、アルバイト以外での初めての仕事に戸惑っていた。
つい先日まで実家暮らしで、大学生だったのに、急に社会人として先輩社員と同じように働くことが求められる。当然分からないことばかりで、右往左往していた。
先輩社員も仕事を教えてくれるが、付きっきりではなかったので、分からないことが出てくるとパニックになっていた。

そんな中 Aさんは私に、積極的に話しかけてくださった。
服装や、お弁当を作っていることをを褒めてくださることもあったし、他にも、体調や困っていることはないかを気にかけてくださって、精神的に随分と助けられた。

◎          ◎

社会人2年目になったとき、仕事には慣れてきたタイミングではあったが、チームの人員が減って、一時的に私の仕事の負荷が高くなった。
めげそうになっている私の雰囲気を察して、サポートを厚くしてくださっていたことを後から知ったときは、泣きそうになった。
昨年、私がチームを異動した後にも、忙しくしている私を何かと気にかけてくださった。
部署の雰囲気はどうかであったり、ごはんは食べているかであったりと、本当の母のように心配してくれた。
「チームを異動してしまって寂しい。また一緒のチームで働きたい」と言われたときは、胸の奥がじんわり温かくなった。
頼りにされているという実感が、湧いた瞬間だった。
こちらの方こそAさんと働きたいと思っていると思わず返した。

◎          ◎

最近ではAさんとは、プライベートでも仲良くしている。休日にカフェにでかけたり、気になった雑貨やスイーツの写真を送り合う日々だ。
つい先日、Aさんは、「おいしいお菓子を見つけたから高山さんにも食べてほしい」と言って、かわいい焼き菓子をプレゼントしてくださった。
会社の同僚を越えて、さながら友達のような関係性だ。気さくに接してもらえることも嬉しく、感謝している。
天真爛漫なところや、持ち物を好きなもので揃えているところ、そして香水や化粧品にもこだわっているところが、女性としても尊敬の念を抱いているし、今後の目標としたい存在である。
色んな人に気を配り、多方面へ愛情を注いでいる。
そんなAさんの生き方が素敵だと思うので、彼女のような「母親」を目指したい。