生まれて初めてついたウソでした。
悲しまれたくなくて、初めての友達についたウソでした。
小学校に入学して、初めてお友達になったはるきちゃんとの思い出
小学校1年生の3月25日。大好きな土地を離れなければいけなくなった。
同じ幼稚園の子たちと一緒の小学校。
1年3組27番。
初めてもらった私だけの番号。
「園児」から「児童」と呼び名が変わったのが、意味の違いは分からないけれど、なんだか大人になったような気がして嬉しかったの。
初めて「お友だち」になったはるきちゃん。
入学式の入場列で前後だったから、私、ソワソワしていたから目の前のはるきちゃんに話しかけた。
「お友達になろうよ」って。
偶然、方向が一緒で、幼稚園の頃からの幼馴染ちぃちゃんと3人で話しながら帰った。
お母さんたちも、はるきちゃんのお父さんとお話していた。
坂を上ったところにある虎のいる動物園、私が食あたりにあったピクニック、中休みには鬼ごっこしたね。はるきちゃんは足が速かったから、全く捕まえられなかったな。
夏のプール、私はカナヅチだからクラスは違ったけど、自由時間に3人でどれだけ長く潜っていられるか競ったね。
ヒコーキの遊具がある公園で雪合戦もしたよね。
私が好きだった絵本を読みに、ちぃちゃんの家に遊びに行ったこともあったね。
はるちゃんがいつも持ってきてくれた占い付きのお菓子、今もたまに食べています。
決まったトウキョウへの引っ越し。はるちゃんには言えなかった
12月。児童になって初めての冬休み。
私ね、結構いい子にしていたと思うの。
宿題だってちゃんとやっていたし、プールは苦手だったけど毎日さぼらなかったし、あと、雑巾がけも組体操の一番下も、膝が痛かったけど我慢してたんよ。
やのに。
小学生になった私が貰ったクリスマスプレゼントは、春休みにトウキョウに引っ越すって……。
私、トウキョウなんてテレビでしか見たことなかった。
引っ越すっていうのは、ココをサヨナラすることなんだよってお母さんが言うの。
ちぃちゃんのお母さんと私のお母さんは園児だった頃から付き合いがあったから、ちぃちゃんはお母さんから聞いていたんだって。
でもはるちゃんには、言えなかった。
終業式の日、はるちゃんが言った。
「クラス替え、三人同じクラスだとえ~よね!!」
私、本当のこと言えなかった。「二年生から、トウキョウに行くの」
嘘もついた、し……住所も聞けなかった。
ちぃちゃんからの手紙づてに、はるちゃんが嘘つきって泣いていたことを知った。
あの日に戻れたらいいのにな。
嘘なんてつかなきゃよかったのにな。
私、あれが初めてついた嘘だったの……。
10年以上たった今でも、はるちゃんが夏休み前にくれたパイナップル柄のお手紙を持っています。大きい字で便箋4枚も使ってくれたお手紙。
トウキョウに来てから、何度かテレビの中でそっちの映像を見たよ。
それを見るたびズキズキしたの。
ずっと謝りたかった。「お友達になろうよ」は本当だったよ
高校生になって、はるちゃんにずっと謝りたくて。バイト代を貯めて夏休みに新幹線でそっちに行った。
ちぃちゃんには会えたけど、高校が別々だったから疎遠になったんだって。
ヒコーキの遊具は危ないからってな砂場になってたし、夏のプールはなくなったんだってね。
はるちゃんに似た人を帰りの駅で見かけたの。
でもごめんね。あんなに謝りたかったのに、はるちゃんに会いたかったのに。
私、また怖くて。
もしかしたら、はるちゃんじゃないかもしれないし……。
もしかしたら、はるちゃんは私のこと、もうお友達とでも思ってないんじゃないかって。
私、知らないふりして話しかけなかった。
あれからそっちには行っていません。
大学で、そっちの出身の子にも何人かあったけど、学区が違う子ばかりだった。
もう10年以上たったから私も大人になったから、あの時みたいにズキズキせずに嘘をつけるようになっちゃったけど、今だにはるちゃんの手紙は捨てられません。
どこにいるか分からないけれど、はるちゃんは私のこともう覚えてないかもしれないし、友達とも思ってないかもしれないけど、私は、ずっとはるちゃんのこと友達だと思っています。
あの日、嘘ついたこと。ほんとにごめんなさい。
でも「お友達になろうよ!」っていったのはホントのことだったの。ずっと。
堂々と新幹線に乗れるようになったら、トウキョウからそっちにいこうと思います。
はるちゃんも、ちぃちゃんもいないかもしれないけど。
私はあなたたちが大好きです。