ラブレターを渡したあの人は、同じ日に別の子に連絡先を聞いていた

ある時、私はお菓子と一緒に好きな人にラブレターを渡したことがあった。
曖昧な関係を終わらせるために。
その日は、私のことを考えて欲しかったという我儘な気持ちだけがあった。
しかしながら、そんなに上手くはいかない。
相手は、私がラブレターを渡したあと、別の女の子に連絡先を聞いていた。
それを目の前で見てしまった。
見て見ぬフリはできなかった。
私が泣かなかった理由は、出来事が仕事場だったということだけだ。
私は以前から、いつその人にラブレターを書いて渡すか悩んでいた。口で想いを告げることはリスクがあった。
それは、会うことができるのは、仕事場だけだったからだ。
誰かに聞かれたらすぐ噂が広まる。
まるで学校のような職場だった。
気がつかないうちに噂は広まる。
ありもしない噂まで一人歩きする。
だから、手紙で渡すしかなかった。
そして、私の想いは届かないことを知っていた。
あの人には恐らく好きな子(気になる子)がいるのだ。
仕事場でその子がいると、必ず近くに行き、話しかける。
私以外の職場の人も気づいていた。あの人がその子を狙っていることを。
爽やかな声で挨拶をする。その声は職場には響いていなかったかもしれないが、私には響いていた。
あの人は、私の元には来なかった。
あんな爽やかな声なんて、聞いたことがない。
知っていたからこそ、ケリをつけたかった。
想いを伝えてしまいたかった。
職場には様々な目がある。
いい意味でも、悪い意味でも。
ただ、それが当事者には届かない仕組みになっていた。
ちなみに、私の想いも職場の何人かにはバレていたらしい。
いつ手紙で伝えようか。
それはバレンタインデーのお菓子を渡す時に決めた。
想いを伝えるためには丁度良い行事だ。
長々とした想いをズラズラと綴ることは私には合わない。
端的にまとめた。小さいメッセージカードに書いた。勿論封筒に入れて。
重くなりすぎない告白は、1枚のメッセージカードに託された。
私の精一杯の努力だ。
伝えずそのままいくことだって可能だ。しかし、それをやめた私。
渡す前日の夜中。私は言葉を選びつつ書いた。
渡す当日、私はお菓子と一緒にラブレターを渡した。本人に声で「好き」とは伝えなかった。
職場だったから。
「中に、ラブレター入れてあるから」
それだけを伝え、お菓子の入った袋をそのまま渡した。
「えっ!?」と少し驚いてたが、あの人はそのあと何も言わなかった。
何か言って欲しかった。それが私の本音。
しかし、スルーされてしまった。
それから1時間後ほど(もう少し長かったかもしれない)、事が起こった。
あの人は、好きな子を見つけて話しかけた。
そして、連絡先を聞いていた。
わかっていたことだったが、辛かった。
その日だけで良い。私のことだけを考えて欲しかった。その想いはただの我儘にすぎないが。
目の前で偶然見てしまった私の運のなさ。自分自身を呪った。
何故、私は今ここにいるのだろう?別にここにいるのは、誰でも良いだろう?何故私だったのだろう。私が見てしまったのだろう?
連絡先を聞いていたことの悲しみというより、自分自身の運の無さに泣きそうになった。
「なーにナンパしてんの?」
私はあの人に言った。
「ひどいな〜」
あの人に言われた。あなたに言われたくはない。
本音は心の中でぐちゃぐちゃにして潰した。
その後、私は相変わらず涙目だった。
しかし、泣く訳にはいかない。ここは仕事場だ。私情は仕事では要らない。
私は仕事しに来ているのだから、仕事をする。
涙目なのも誰にも見られないようにしていた。
いつも以上に行動を速くした。
止まっていたら、見られるかもしれない。
「マナマナが泣いてる」という噂が広まってしまったらめんどくさい。
私はいつものように仕事をした。
そのような苦いバレンタインだった。
同じようなバレンタインは、二度と味わいたくない。
良い人を探そうと思った瞬間だった。
かがみよかがみは「私は変わらない、社会を変える」をコンセプトにしたエッセイ投稿メディアです。
「私」が持つ違和感を持ち寄り、社会を変えるムーブメントをつくっていくことが目標です。
恋愛やキャリアなど個人的な経験と、Metooやジェンダーなどの社会的関心が混ざり合ったエッセイやコラム、インタビューを配信しています。