大学時代、私は新卒の就活を二度経験している。
一度目は学部四年生、二度目は修士二年生の時だった。

初めての就活。これほど就活が辛いものだとは思わなかった。
田舎で生まれ育った私は、都会での就活の波に揉まれに揉まれた。
周りの就活生は内定を獲得するための土台作りを、学生の早い段階から固めていた。
「大学って勉強する場所でしょ?なんで就活のために貴重な時間を費やすの?」と思っていたが、世間知らずな私の甘い考えだった。

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私も置いて行かれまいと、履歴書やESを何度も書いた。しかし、私のこれまでの経験をもとに、あたかも「私は優秀な人材です!」と過剰にアピールした文章を書くたびに嫌気がさしていた。
面接も辛かった。普通に面接した時は、選考通過しても、お祈りメールをもらっても、現実を受け止めることができた。
しかし、最終面接のお祈りは、とてもショックで泣きそうになった。
また、面接官の質問に耐えられなくなったことも何度かあった。
過去の嫌な思い出を深掘りする面接官、セクハラめいた質問をする女性面接官、詰問する面接官。耐えられず、泣いてしまったこともある。
最終的にとあるメーカー企業から内定を貰えた。しかし、内定式で同期や社員の雰囲気を見て、その企業がしっくりと感じられなかった。結局、研究したいという気持ちが強くなり、院試に合格した後、内定を辞退した。

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二度目の就活。一度目は闇雲にエントリーしたが、今回は就活の軸をある程度固めた上で臨み、エントリーする企業も慎重に選んだ。
一方、日本で新型コロナウイルスが流行し始めた。そのため、リモートで面接せざるを得なかった。就活生も、企業側も困惑していた。今はZoomが主流だが、いくつものビデオ通話アプリをインストールし、面接を受けた。リモート面接のノウハウもわからないまま、ひたすら質問に答えていた。
その影響で、落ちてしまった企業もいくつかあった。

さらにショックな出来事が起きた。第一志望だった企業の最終面接に落ちた。
一次、二次面接の手応えは感じていたし、コロナの影響で面接が延長した際も、人事社員は丁寧に対応してくれた。なのに、落ちた。
私は悔しくて、泣きそうで、思わず外に出て、あてもなく自転車を漕ぎ続けた。

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そんなコロナ禍の就活で、選考に落ちたものの悔しさを感じなかった企業があった。
その企業は国際協力を事業としており、海外に興味を持ち始めた高校時代から関心を寄せていた。国際関係の勉強や取り組みをしてきた学生にとっては憧れの企業で、エントリー数が多い一方、ESの通過率も低い。
私の就活の軸とはずれていたが、高校時代に憧れていたことを思い出し、記念受験のような感覚でESを提出した。

すると、ESが通ってしまった。なんてことだ。でも、このチャンスを逃したくないと思った私は、本格的に選考対策をした。
そして、一次面接。面接官は優しそうな女性社員さんだった。質問に対する私の答えを、ゆっくり、そして丁寧に聞いてくれた。
結果は一次面接落ち。けれども、全く悔しくなかった。むしろ、清々しかった。
あの社員さんは私の言葉を聞くだけでなく、内側も見ていた。私がどんな人間か。今まで何を見てきたのか。私がこの仕事に向いているのか。
それらを踏まえて合否を判断してくれたのだ。振り返ってそう思った。国際協力を事業としているだけあって、人をしっかり見てくれる。私はますますこの企業のファンになった。
辛い就活期間の中、なぜか心が安らいだ時間だった。

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現在、私は新卒で入社した会社を退職し、転職活動中である。
今までの就活や、新卒としての就業経験を踏まえて、色々な企業を調べている。
さすがに年齢のこともあり、もう就活で泣くことはできないが、たとえうまくいかなかったとしても、「受けてよかった」と思えるような会社に出会いたい。